「リチウム電池材料」日本で増産…外資系化学メーカーの動きの影響度
電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池(LiB)材料について、外資系化学メーカーが日本国内で増産に相次ぎ動き出している。独BASFは合弁会社でLiBの正極材の生産能力を増強する。独エボニックもグループ会社で同電池向け酸化アルミニウム「フュームドアルミナ」の生産に乗り出す。日本をはじめとするアジアでの電池需要増に対し、供給体制を整える構えだ。(山岸渉)
BASFは戸田工業(広島市南区)との合弁会社のBASF戸田バッテリーマテリアルズ(山口県山陽小野田市)が、EV向けLiBのハイ・ニッケル系正極材の生産能力を増強する。小野田事業所(山陽小野田市)に新ラインを設け、2024年後半に稼働を予定。25年までに生産能力を年6万トンにする。
エボニックは三菱マテリアルとの合弁会社、日本アエロジル(東京都新宿区)の四日市工場(三重県四日市市)でフュームドアルミナを生産する工場を建設する。数十億円を投じて23年夏に着工し、25年の操業開始を予定する。
日本ではトヨタ自動車が26年まで新たにEV10車種を投入し、年150万台とする販売計画を新たに設定するなど自動車メーカーのEVシフトが加速してきた。各社で具体的なEV投入計画が鮮明になってきている。こうした動きを追うようにBASFやエボニックでも日本などアジア向けに供給体制を整える。
実際、BASF戸田バッテリーマテリアルズはEVの需要拡大を見込み、国内の電池メーカーを中心に正極材の提案を強化する構えだ。トヨタとパナソニックホールディングスが出資するプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES、東京都中央区)に正極材の供給を新たに始めた。
日本アエロジルも日本や中国、韓国といったアジア向けの供給を見据える。酸化アルミニウムのフュームドアルミナは「LiBの機能を高める添加剤になる」(エボニック・ジャパン担当者)と説明。次世代LiBの超薄膜セパレーター用コーティングなどに使用され、EVの走行距離伸長や電池の安全性、急速充電性能の向上に貢献すると期待する。
日本の化学メーカーでも三菱ケミカルグループは、三菱ケミカルとUBEが出資するMUアイオニックソリューションズ(東京都千代田区)でのLiB用電解液の増産などに取り組む。レゾナックは正負極用導電助剤「VGCF(気相法炭素繊維)」について川崎事業所(川崎市川崎区)での生産能力を引き上げる計画だ。EV化とLiBをめぐる動きが、内外の化学メーカーの取り組みをさらに活発化させる可能性がある。
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