輸送・保管コスト10分の1、日本製紙が開発した均一分散「CNF粉体」の性能
日本製紙は繊維幅を約3ナノメートル(ナノは10億分の1)まで均一分散させた新素材、TEMPO酸化セルロースナノファイバー(CNF)の粉体品を開発し、サンプル提供を始める。搬送や保管が容易で水への再分散性に優れる。同社は従来、このCNFを水分散液で供給しているが、粉体の場合は輸送・保管コストが約10分の1に低減可能で、今後は海外需要の開拓にも注力する。石巻工場(宮城県石巻市)のCNF設備に乾燥工程を設置し、早ければ2026年にも量産を始める考えだ。
製紙会社などが手がける木材パルプ由来のCNFは解繊方法の違いによって複数の種類があり、その一つであるTEMPO酸化CNFはナノ単位まで繊維を分散しやすいとされる。
日本製紙のTEMPO酸化CNFは従来、水分散液で、CNF価格に占める輸送コストの比率が高かった。今回、軽量・高強度で高透明度、安定した粘度、酸素バリアー性、垂れにくさなどの特徴はそのままに、粉体品の供給にめどを付けた。
これまでは粉体から水に再分散する際、ナノファイバーが凝集し、品質が安定しないなどの課題があった。今回、乾燥工程のノウハウや乾燥状態の制御を工夫することで問題を解決し、粉体化にこぎつけた。
粉体品の平均粒径は約10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)、透明度は85%以上、粘度は30ミリパスカル秒以下。
TEMPO酸化CNFは塗料に使われるほか、一部タイヤメーカーに環境負荷を低減するゴム材料として実績を持ち、蓄電装置への活用も検討されている。同CNFは石巻工場(宮城県石巻市)で製造しており、年産能力は500トン。粉体品の量産に向けて乾燥プロセスを付加する必要があり、26年度ごろまでの設置を検討していく。
日刊工業新聞 2023年04月27日