ニュースイッチ

よく聞くけれど意外と知らない「コラーゲン」の仕組みとは

おすすめ本の抜粋「トコトンやさしいコラーゲンの本」

体を守る皮膚の構造とコラーゲン

人の皮膚は「薄皮一枚」ではなく、図のように①表皮、②基底膜、③真皮の三重構造になっています。厚さは、平均すると表皮だけで0.2mm、真皮までで3〜8mmしかありませんが、全身分で畳1枚ほどになり、体の大きな部分を占めます。

図1 皮膚の構造

皮膚の構造を支える真皮は主にⅠ型コラーゲンでできており、弾性のあるコラーゲン線維が密に、そして網状に分布することで柔軟性と強靱さを生み出しています。

私たちが皮革製品として利用しているのも牛や豚などの表皮と真皮の一部ですから、その丈夫さはわかるはずです。なお、真皮にはコラーゲンをつくる線維芽細胞や、免疫機能を司るマスト細胞、エラスチン、ヒアルロン酸なども存在します。毛細血管もここまで達しており、かなり複雑な働きをする器官でもあるのです。

基底膜はⅣ型コラーゲンでできており、格子状のフィルターのような構造で表皮と真皮を分けています。真皮には血管が張り巡っていますが、基底膜を境にして表皮には侵入しないことが知られており、ケガが真皮まで達しない限り出血することはありません。

表皮の主成分はケラチノサイトという細胞で、基底膜の上に積層した構造になっています。細胞といっても、表面に行くほど核がなくなった「細胞の抜け殻」のようなものになっているので、活発に生体活動をしているわけではありません。それでも、これらの層が免疫を担う細胞(ランゲルハウス細胞)の力によって病原菌やウイルスの侵入を防いでいるのですから、その役目は重要です。

皮膚の表面の角質は主にケラチン層で疎水性を示し、健康な肌ほど水を弾きます。角質は、熱や紫外線から体を保護するだけでなく、病原性細菌やウイルスが侵入してくるのを防ぎます。これは残念ながらコラーゲンにはできない仕事です。

図2 皮膚構造の中のコラーゲン

(「トコトンやさしいコラーゲンの本」p.28-29より抜粋)

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<書籍紹介>
テレビ出演歴もあるコラーゲン研究・用途開発の第一人者が“超” わかりやすく紹介。健康・食品・医療・工業製品など身近なところで結構使われているコラーゲンの知られざる秘密に迫る。コラーゲンの働きなどのメカニズムも、イラスト図解で一目瞭然に理解できる。
 
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいコラーゲンの本
著者名:野村義宏
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,760円

<著者>
野村義宏 (のむら よしひろ)
東京農工大学大学院 農学研究院 教授
1962年宮城県生まれ。1984年東京農工大学農学部農芸化学科卒業。1990年東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了(農学博士)。2013年東京農工大学大学院農学研究院教授。2017年から日本皮革技術協会理事長を兼務。コラーゲンをはじめとした硬蛋白質の基礎から応用までの研究に従事する。
2011年11月26日放送、NTV系「世界一受けたい授業」骨肌髪筋肉の老化を遅らせる!? 解明されたコラーゲンの新事実! 出演

<目次>
第1章 コラーゲンってなに?
第2章 体の中のいろいろなコラーゲン
第3章 動物や進化で異なるコラーゲン
第4章 コラーゲンはどうやってでき、どう分解される?
第5章 革や墨、膠、写真フィルムもコラーゲン
第6章 食べる・飲むコラーゲン
第7章 コラーゲンと美容
第8章 コラーゲンと病気・医療

編集部のおすすめ