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世界最小の重粒子線がん治療装置に、東芝エネが「超電導シンクロトロン加速器」製造開始

世界最小の重粒子線がん治療装置に、東芝エネが「超電導シンクロトロン加速器」製造開始

量子メスの最終イメージ(第5世代装置=量研機構提供)

東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区、四柳端社長)は、小型・高性能な重粒子線がん治療装置である「量子メス」の実証機向けに、重粒子を超高速に加速させる「超電導シンクロトロン加速器」の製造を開始した。2026年度末までに実証機を製造し、量子科学技術研究開発機構が千葉市稲毛区で建設中の「量子メス棟(仮称)」内に設置する。世界最小の重粒子線がん治療装置になる。

東芝エネルギーシステムズは、みずほ東芝リース(東京都港区)と共同で、このほど量研機構との間で実証機の賃貸借契約を締結した。量研機構では、医薬品医療機器法(薬機法)の承認などを経た後、実証機の臨床運用を計画している。

量研機構では16年から量子メスの開発を進めている。超電導技術を取り入れ、従来の重粒子線がん治療装置より大幅な小型化を達成する。今回開発する実証機は第4世代と位置付けており、第1世代装置(120×65メートル)の6分の1の大きさとなる。将来は第5世代として、40分の1程度の大きさの実現を目指している。

また、がんの部位やステージによって照射するイオンを一般的な炭素からヘリウムや酸素などに変える「マルチイオン治療」にも対応している。

重粒子線治療は放射線治療の一種。炭素などのイオンを光速の約7割にまで加速した後、患者の深部にあるがん病巣に集中的に照射する。身体への負担が少なく、がんによっては外科手術と同等の効果が得られる。しかし、装置が大型・高額のため、治療施設は国内では量研機構のQST病院(千葉市稲毛区)など7施設しかなく、導入施設を増やすため、装置の小型化などが求められていた。


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日刊工業新聞 2023年04月14日

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