生産増強に2000億円投資、クレハが重点配分する成長分野は?
クレハは2023―30年度までの8年間に、生産能力増強や研究開発などに総額2500億円を投資する方針を示した。需要が旺盛なリチウムイオン電池(LiB)バインダー(接着剤)向けポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)の新工場建設に加え、新事業開発やスタートアップへの投資などにも取り組む。成長分野への投資を通じて技術開発などの加速につなげ、中長期的な事業基盤の強化を目指す。
30年度までの8カ年の新中長期経営計画を策定した。機能製品を中心とする成長事業への投資を積極化し、生産能力増強への投資に2000億円を充てる。
特に電線被覆や釣り糸などに使われてきたPVDFは近年、自動車の電動化を背景にLiBの電極用バインダー用途の需要が急拡大している。設備投資を増やすことによって、こうした旺盛な需要を取り込む。
国内外で投資を積極化する。中国では24年度をめどに常熟市(江蘇省)に大型の新工場建設を予定するほか、国内ではいわき事業所(福島県いわき市)のデボトル(改良)など既存工場での生産増も検討中。PVDF事業は22年度に売上収益400億円超を見込んでおり、他用途と比べて付加価値の高いLiBバインダー向けで供給体制の強化を進める。
新中長期経営計画は「未来創造への挑戦」と銘打った。「環境・エネルギー」「ライフ」「情報通信」の3つを重点事業分野に位置付け、経営資源を集中させるとともに既存製品の性能向上やバリューチェーンの拡大を図る。成長事業の強化や市場開拓などで、30年度に売上収益2800億円(22年度予想比47・4%増)、営業利益350億円(同29・6%増)を目指す。
研究・技術開発面では、PVDF、ポリフェニレンサルファイド(PPS)といった機能樹脂の性能向上に加え、継続的な農薬開発、次世代電子機器市場における高分子強誘電フィルムの用途開拓など重点事業分野ごとに主要テーマを設定した。さらに軽量化や省エネルギー化に貢献する航空宇宙産業向けの新素材開発も進める計画だ。
このほか二酸化炭素(CO2)排出削減や廃棄物低減対策に100億円を投じる方針を示した。脱炭素につながる技術基盤の確立に取り組み、50年度のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)、30年度にエネルギー起源のCO2排出量を13年度比30%以上削減する目標を掲げた。