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「『どう生きるか』を突き詰める」…サンシングループ代表の経営哲学

会社を意志・アイデア実現の場に

「哲学とは問いである。経営哲学とは『どう生きるか』を突き詰めること」―。電子部品商社のサンシン電気(東京都練馬区)を中核とするサンシングループの石井宏宗代表の原点は、数百年続く石井家に伝わる三つの家訓にある。「子孫繁栄、文化文明に貢献する、創造者であること」。石井代表はこの命題に経営者、研究者、教育者の三つの立場から向き合い続けている。

父が興したサンシン電気の子会社であるシグマ電子の取締役に、石井代表が28歳で就任した3日後。多額の横領の発覚を恐れた当時の社長が失踪した。「俺がやらねば誰がやる」。執念と意地で再建した。その後もサンシン電気を継承しつつ、7社を起業。吉野源三郎氏の著作「君たちはどう生きるか」より「僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている」に続く一節が勇気をくれた。

経営者として学ぶ中で実践と理論の関係に興味がわき、30歳で社会人院生になる。毎日2時間睡眠の中で経営学修士(MBA)を取得。続けて38歳で経営学博士号を取得した。教育者への道はピンチヒッターから始まったが、次第に「経験した経営事象を普遍化し、微力ながら後生へ遺すことが使命と考えた」。現在は日本工業大学専門職大学院の専任教授を務める。

サンシングループでは毎年、全社員に手帳を配る。「客に愛し愛される徳のある商人を目指す・世界の文化文明の発展のために」。表紙の裏に記した一文は、家訓をもとに定めた経営理念。これを一つの方向性と定めつつ「社員の『どう生きるか』という意志やアイデアを実現する場としての会社でありたい」と石井代表は話す。実務経験に分析や検証といった勉学を掛け合わせてアイデアは生まれる。大学院進学などを資金面で援助するほか、コロナ禍以前からテレワークの環境を整えてきた。

石井代表自身も「小さい頃から作ることや企画が大好き」。高校時代は映画監督として友人と共にギャグやシュールをテーマに自主映画を製作していた。「創造は何よりも楽しむことが大切」。近年は若手やパートを主役にアイデアや気付きを自由に話す会“YAMINABE”を定期開催。「すごく意見が出る。企画へ進むものもある」。

同グループの前身となる新東電気の倒産を乗り越えた父の姿。自身の成功と失敗の経験からも「経営とは、いかなる困難の中でも夢を未来に投企して生きること」ではないかと石井代表は感じている。(熊川京花)

【略歴】いしい・ひろむね 96年(平8)青山学院大経済卒、同年サンケン電気入社。98年サンシン電気入社、99年シグマ電子取締役、04年サンシン電気社長、10年明治大院経営学研究科博士課程修了、経営学博士。22年日本工業大学専門職大学院MOT(技術経営)専任教授。東京都出身、51歳。
日刊工業新聞 2023年02月14日

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