“草分け”ソニー生命、保険募集に生かすAI活用システムとは?
ソニー生命保険は、人生100年時代を見据えたライフプラン分析システム「GLiP(グリップ)」を開発、2022年10月から保険の募集時に活用を始めた。新システムは人工知能(AI)による家計診断に加え、介護施設などのリアルの価格データを活用して具体的に将来をイメージできるよう工夫を施した。漠然とした人生計画をグラフやデータを用いて可視化し、顧客の不安を払しょくするような具体的なライフプランを提案する。
新システムは、過去に蓄積した約386万件のライフプランデータをAIが分析し、顧客のライフスタイルと近いグループの家庭と比較した家計診断が行える。例えば教育熱心な顧客が他の教育熱心な家計と比べ住宅費が大幅に多いと分かれば、住まいのあり方を見直すきっかけになる。
従来は目安となる家計の支出データは「ライフプランナー(営業担当者)の頭の中にあった」(ITデジタル戦略本部の嶋宏紀氏)。過去の膨大なデータをAIに読み込ませて分析することで、より顧客の価値観に近い家計と比較し、説得力のある助言が行える。
ソニー生命は、94年に「業界に先駆けてライフプランのシミュレーションシステムを導入した草分け」(長谷川樹生取締役)だ。新システムは導入以来の大幅な刷新となり、「時代に即した新たな保険販売の武器」(同)として活用している。
今回、システムを刷新した背景には、「老後2000万円問題」に代表されるように、高齢化で「資産寿命」が「健康寿命」に追いつかない社会課題が浮上してきたことがある。新システムは、100歳生きることを前提にして必要な資産や保障をシミュレーションでリアルに把握できることが強みだ。
例えば老後については、どの介護施設に入居するかで必要な金額は異なってくる。新システムは住所から近隣の介護施設を表示し、施設の利用料を示して入居に必要な金額を算出する。同社は新システムに合わせ、顧客の資産形成をサポートする変額個人年金保険「SOVANI(そばに)」も同時に発売した。システムでどのぐらい資金が必要か分かれば、自然に保険の提案につなげられる仕組みだ。
保険は目に見えない商品だが、新システムで定量的に顧客の将来を可視化し、具体的に必要な保険のイメージがつかみやすくなる。ライフプランナーによる適切なコンサルティングと合わせ、他社と差別化する切り札として活用していく。(大城麻木乃)