フェローテックHDの財務体質が劇的に改善しているワケ
フェローテックホールディングス(HD)の財務体質が劇的に改善している。同社は半導体関連製品事業が好調な中、〝徹底的な成長の追求〟を掲げる中期経営計画(2022年3月期―24年3月期)で売上高に匹敵する1800億円の投資を計画。これを支える財務体質改善の効果が鮮明になっている。
財務指標を見ると、自己資本比率は19年3月期の30・3%から22年3月期は49・5%に上昇。株主資本当期純利益率(ROE)は5・7%から26・9%に改善し、現金および同等物は315億円から525億円に増加するなど「大幅に改善した」(財務経理・企画担当の武田明取締役執行役員)。
同社は子会社の株式売却や増資、上場推進など、外部資本を積極活用した資金調達・財務戦略に取り組んできた。ウエハー事業会社の株式売却では売却益のほか非連結化で有利子負債も減少。全体の有利子負債は20年3月期の784億円から22年3月期は375億円に低下している。
23年3月期第2四半期は売上高、営業利益ともに過去最高で「製品のポジションが上がり、事業が強くなっていることが財務指標の改善効果を生んでいる」(同)。1800億円の投資資金は営業キャッシュフロー創出で1086億円(利益改善による上積みを見込む)、資本調達済みが646億円、中国子会社の新規株式公開(IPO)などで賄う方針で、「バランス良く、借り入れなども柔軟に実施していく」(同)。仮に中国子会社のIPOを見込まずに全額借り入れで調達しても、自己資本比率40%超、D/E(デット・エクイティ)レシオ0・5倍程度の財務水準を維持できる見通しだ。
野田耕一IR室長は「中国などで工場を1年ほどで完成・稼働するノウハウを積み上げてきた。短期間でPLに反映でき、数字に出にくい当社の強み」という。市場でのチャンスを逃さない体制も事業や財務の改善に結びついている。財務基盤の強化を受け、22年には「配当性向20%」との数値を提示するなど、株主還元もいっそう強化する方針だ。
【関連記事】EV向け需要を狙うフェローテック、半導体基板の生産能力を2倍以上に!