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中小企業の3社に1社が「過剰債務」の理由

日本の中小企業の3社に1社が「過剰債務」にあることが、東京商工リサーチ(TSR)の調査で分かった。過剰債務にあると回答した中小企業の割合は、6月の前回調査に比べ1・5ポイント悪化の35・7%だった。4月以降3回の調査で割合が最も高かった。実質無利子・無担保融資や返済猶予で倒産件数は低位にある。だが、「これら支援策が過剰債務を誘発している」(TSR)と指摘する。

TSRがまとめた今調査では、負債比率や有利子負債比率など財務分析に基づく数値にかかわらず、債務の「過剰感」を聞いた。全国の大・中小企業計9105社を集計・分析した。債務過剰とする回答は大企業を含めると同1・3ポイント悪化の31・6%だった。

業種別の過剰債務の割合は「飲食店」が79・6%で最も高い。「宿泊業」が78・0%、「娯楽業」が65・3%と続く。60・4%で6番目に多い旅行など「その他の生活関連サービス業」を含め、コロナ禍に伴う公衆衛生上の措置を受け、対面型サービスが総じて過剰感が高まっている様子が分かる。

事業再構築の取り組み状況に関する設問では、過剰債務を理由に「取り組むことができない」「取り組み規模縮小」との回答が過剰債務を抱える企業の34・3%にのぼった。債務が構造改革の足かせになっているようだ。

中小企業の債務問題をめぐっては、コロナ禍による無利子・無担保融資などの施策が過剰債務企業を存続させ、企業の新陳代謝を阻害しているとの指摘が根強い。一方、政府は6月に策定した「成長戦略」で、私的整理の条件緩和を盛り込んだ指針を検討する方針を打ち出している。


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日刊工業新聞2021年8月18日

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