タービン発電機の全損失5%超低減、三菱電機が開発したスゴい絶縁技術
三菱電機はタービン発電機の全損失の5%超を低減できる絶縁技術を開発した。発電機の固定子コイルを覆う絶縁テープに、ナノサイズの無機粒子(フィラー)を分散した樹脂を含浸させる。従来の絶縁材と比べ耐電圧性能を4割伸ばし、絶縁寿命を30倍以上に向上した。出力1ギガワット(ギガは10億)で1年間稼働する場合、1000トンの二酸化炭素(CO2)排出量削減に相当する燃料削減効果が見込める。2024年以降にタービン発電機としての製品化を目指す。
タービン発電機は電磁石である回転子の回転により、固定子のコイルに電気を発生させるが、発電機の効率を高めるには固定子コイルの絶縁材を薄くしてコイル導体の比率と放熱性を高めることが必要。ただ絶縁材を薄くすると絶縁性能が低下し、発電機寿命が短くなるのが課題だった。
開発した絶縁技術は、タービン発電機に使う銅製コイルの実機を使って試作し、性能を評価した。マイカ(雲母)粒子が重なってできた厚さ約0・1ミリメートルの絶縁テープをコイルに巻き付けた後、フィラーを分散したエポキシ樹脂を含浸させて加熱硬化する。
フィラーは粒径100ナノメートル以下(ナノは10億分の1)のシリカと酸化チタンのそれぞれで性能を確認した。
均一に分散させるためフィラー表面を改質し、樹脂にフィラーの沈降を抑える材料を配合した。耐電圧性能と絶縁寿命が伸びる分、絶縁材を薄くしてコイル導体の比率を増やし、発電機効率を向上できる。
脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーの導入が増える中、タービン発電機は電力の安定供給のため火力や原子力、水力といった発電プラント向けで需要が見込まれる。三菱電機の主力タービン発電機「VP―X」は発電機効率が99%と高く全損失は約1%だが、さらなる高効率化が求められている。開発した絶縁技術を自社製発電機に適用するほか、高電圧・高電界下で使う開閉器、変圧器、モーター、パワーモジュールにも展開する。
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