圧縮強度は建築基準法の3倍、東大などが実現したスゴいCO2吸収コンクリート
東京大学の野口貴文教授らは、二酸化炭素(CO2)を吸収させて作るコンクリートで36メガパスカル(メガは100万)以上の圧縮強度を実現した。建築基準法で求められる12メガパスカルの3倍の強度になる。CO2を炭酸カルシウムとしてコンクリート内に取り込むことで、針状結晶が絡み合って強度が向上する。2025年に2階建ての実験構造体を作製し、大阪・関西万博での披露を目指す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「ムーンショット型研究開発事業」で、清水建設や太平洋セメントなどと開発した。炭酸化モルタルにCO2を吸収させ炭酸水素カルシウムとして溶かし、昇温して炭酸カルシウムを析出させる。材料の加圧充填と浸水、乾燥を繰り返して積層しながら直径5センチメートル、高さ10センチメートルのコンクリート硬化体を作製した。
原料となる炭酸化モルタルの粒径分布を整え、炭酸カルシウムのアラゴナイトが多くなる70度Cで析出させる。すると炭酸化モルタルの粒子を針状結晶がつないで大きな摩擦力が得られ強度が増す。圧縮強度は36メガパスカル以上と、高強度コンクリートに近い値になる。105度Cで乾燥するなどエネルギーを消費する工程は必要だが、炭酸カルシウムをコンクリートに用いて十分な強度を出せることを実証できた。
建築廃材などの廃コンクリートから原料を作る工程では、分級し水の噴霧と乾燥を繰り返すとCO2固定量を自然吸収の56倍に高めることに成功した。
今後、原料製造や施工のプロセスを最適化して全体でのCO2排出量を削減する。理論上はCO2固定量が排出量を上回り、脱炭素に貢献する。
日刊工業新聞 2023年01月24日