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三井住友ファイナンス&リース社長が挙げる企業家に必要な要素

今だからこそできることは何か―。三井住友ファイナンス&リース(FL)の橘正喜社長は、自ら進んで物事に取り組み、困難に屈せずやり遂げる住友グループの事業精神「進取敢為(しんしゅかんい)」をリーダーシップを示す際の柱としている。

1980年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行した橘氏は02年の東北法人営業部長を皮切りに約20年間、さまざまな組織のトップを歴任してきた。

不良債権処理に向けた公的資金投入により、経営健全化が求められていた06年に人事部長に就任。当時はベースアップが17年間なく人員も限られる中、社員の離職が増えていた。そうした現場の姿を見ていた橘氏は「歯を食いしばって頑張っている社員にどのようなメッセージを送るかをまず考えた」。

橘氏は経営の自由度が戻った段階で社員に対して何ができるか準備するチームを創設。06年10月の公的資金完済と同時に10年以上ぶりとなる初任給引き上げなど処遇向上、過剰労働の改善、新卒の派遣社員約2300人の正社員化などを立て続けに打ち出した。

先を見据えながら間髪を入れず行員にメッセージを発信できたことで、離職率の削減につながった。「今だからこそできることは何かをリーダーとして絶えず考えなければならないと再認識した」と当時を振り返る。

10年4月には米州本部長として米ニューヨークに赴任した。当時の米国の金融大手にリーマン・ショックの余韻が残る中、邦銀が海外市場から資金を調達する際に求められる上乗せ金利「ジャパンプレミアム」が解消されつつあった。

不良債権問題も収束する中、「三井住友銀行が今までやりたくてもできなかったチャンスが出てきた」と感じた橘氏は、部下に対し新ビジネスに目を向けるよう指示を出す。その部下が持ってきたのが、英大手銀のロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)から傘下の航空機リース事業を買収する案件だった。

この買収を12年に成し遂げ、「SMBCアビエーションキャピタル」になった事業は10年間で3000億円近い収益をもたらした。リーマン・ショックが起きたからこそ出てきた案件は現在、橘氏が率いる三井住友FLの主力事業となった。

橘氏は「すでに存在して気づかれることを待っている案件に対して機敏なこと」を企業家に必要な要素の一つに挙げる。その案件に気づくためのアンテナを張り巡らすべく、自らの肩書を社外向けに最大限活用することを求めている。(編集委員・水嶋真人)

【略歴】たちばな・まさき 80年(昭55)東大経済卒、同年住友銀行(現三井住友銀行)入行。07年執行役員、10年常務執行役員、13年取締役兼専務執行役員、15年副頭取、17年三井住友FL社長。大阪府出身、66歳。


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日刊工業新聞 2022年12月06日

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