核融合炉の燃焼効率化へ一歩、量研機構が高速ヘリウムと“不要な低速”選択的排出を両立
量子科学技術研究開発機構のビアワーゲ・アンドレアス上席研究員らは、核融合反応を促進する高速ヘリウムの閉じ込めと不要な低速ヘリウムの排出を両立できる条件を発見した。核融合炉の効率的な燃焼制御を実現できる。プラズマの電流分布を最適化することで、プラズマ運動により炉心から低速ヘリウムだけを排出し、高速ヘリウムはこの影響を受けずにプラズマ加熱を続けられる。核融合発電炉の性能向上へ向けた制御手法の開発につなげる。東京大学、欧州の核融合研究機関によるコンソーシアム「EUROfusion」との共同研究。
核融合反応で生成された高速ヘリウムは燃料加熱のため炉心に長く閉じ込められる必要がある。一方、加熱に使われた高速ヘリウムはエネルギーを失って低速ヘリウムとなり、炉心に蓄積して核融合反応を阻害する。
これまでにプラズマ内で密度分布などが周期的に崩壊と回復を繰り返す「鋸歯状崩壊」により、低速ヘリウムを炉心から排出できることが示されている。だが、同時に高速ヘリウムも排出され効率が下がってしまう。
研究グループは鋸歯状崩壊の数値実験や崩壊前後のヘリウム粒子軌道追跡から、高速ヘリウムが鋸歯状崩壊の影響を受けずに済む電流分布条件を突き止めた。これにより低速ヘリウムの選択的排出が可能となる。
英国にある欧州トーラス共同研究施設(JET)で生成されたプラズマの高速、低速ヘリウムの振る舞いを調べ、核融合専用スーパーコンピューターで解析した。
日刊工業新聞 2022年11月02日