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発展する宇宙開発、月・火星進出への現在地

発展する宇宙開発、月・火星進出への現在地

新型の大型基幹ロケット「H3」の飛行(イメージ=JAXA提供)

2022年は宇宙分野で新たな成果が多く見られた。特に米主導の「アルテミス計画」の第1弾として宇宙船「オリオン」が無人で月を周回して地球に帰還したことが話題になった。日本でも宇宙ベンチャーが開発した月探査機が打ち上がり、月面着陸を目指して飛行を続けている。国際宇宙ステーション(ISS)でも月・火星探査に向けた科学実験を進めており、より高度な宇宙開発・技術の発展が期待できる。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の若田光一さんは10月にISSへ向かい、現在も長期滞在を続けている。低重力での液体の挙動を観測する実験を実施し、重力の異なる天体での水の動きから有人探査に必要な機器開発などに生かす。若田さんは「月・火星探査につながる成果を創出したい」と意気込んだ。

宇宙空間への進出には輸送技術が必要だ。JAXAと三菱重工業が開発を進める新型の大型基幹ロケット「H3」が開発フェーズを終えた。H3はアルテミス計画で月近傍拠点「ゲートウェー」に物資を輸送する役割を担う。開発中の新型輸送機「HTV―X」とともに月面探査への協力体制が整いつつある。米航空宇宙局(NASA)は日本人宇宙飛行士のゲートウェーへの搭乗機会を1回提供する。それに選ばれる可能性がある新規の日本人宇宙飛行士の審査が大詰めとなり、10人に最終審査の切符が渡された。23年2月ごろに候補者が決まる。

一方で、固体燃料ロケット「イプシロン」6号機の打ち上げや超小型月探査機「おもてなし」の月面着陸が失敗し、原因究明に向けた調査を進めている。さらにJAXA宇宙飛行士の古川聡さんが責任者を務めた宇宙医学系の研究グループの不正が発覚。日本の強みである安全・信頼性が危ぶまれている。

23年2月にH3試験機1号機を打ち上げる予定。次期宇宙輸送機としての一歩を踏み出すだけでなく、信頼性回復のためにも打ち上げ成功が求められる。

日刊工業新聞 2022年12月27日

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