自動車部品拡大狙うヤマハ、楽器に次ぐ新事業の確立なるか
ヤマハは車載オーディオなどを軸とする自動車関連事業を拡大する。音に関する既存技術を生かし、車室空間の快適さを求める需要に対応するなど車載向けでの採用が徐々に増加。近い将来に自動車部品を含めた部品・装置その他事業の売上収益を、2022年3月期比約倍増の700億円に引き上げる方針だ。主力の楽器以外の新事業確立に向け、号砲を鳴らす。(浜松支局長・山岸渉)
「成長を期待する分野は、オーディオといった自動車の中の音環境だ」。中田卓也社長は新たな事業の展望をこう見据える。楽器で有名なヤマハだが近年、力を入れるのが自動車向けだ。特に商機とみているのが、車載オーディオ製品。海外自動車メーカーを中心に6社での採用が決まっているといい、最近では音響特性に合わせたスピーカーシステムが中国・広汽乗用車の2車種に採用された。
自動車業界が電気自動車(EV)や自動運転といった変革期を迎え、車室環境のニーズにも変化が訪れている。中田社長は「(EV化で)エンジン音がなくなってもノイズは存在する。快適な移動空間が求められる中で、上質な音楽を楽しみたい需要が出てくる」と分析。ヤマハが長年手がけてきた音響に関する技術やノウハウなどの強みを生かせるとみる。
ヤマハは車内で映画館のような臨場感のある立体音響を体感できる車載オーディオの開発、提案にも取り組む。電動化や自動運転の技術が進む中で、快適性に寄与する性能としてアピールする。
自動車部品では木材加工と塗装の技術を生かした加飾パネルが、米国メーカーの高級車向けに採用されるなど着実に実績を積み重ねている。
ヤマハの車載オーディオなどの部品・装置その他事業は23年3月期で同420億円を予想。総売上収益の約1割を占め、堅調に推移する。ただ足元では、ゴルフ関連の好調さなどを含むだけに今後の展開を注視する。
それでも徐々に需要が高まる自動車部品による事業の基盤固めへの期待は大きい。中田社長は「25年3月期までの中期経営計画の中では難しいが、一定期間で700億円を達成したい」と意気込む。
車室空間での音への需要は変化の真っただ中にある。ヤマハは自動車業界の新たな潮流を追い風に、音響製品・技術の提案を加速していく。
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