「人工脳」実現へ、脳神経模したイオニクス素子で世界最高性能
物質・材料研究機構の土屋敬志主幹研究員と西岡大貴研修生、東京理科大学の樋口透准教授らは、脳神経を模したイオニクス素子を開発した。脳神経のようなスパイク状の電流が流れる。この素子で脳の短期記憶を模したリザバー計算を実行すると誤差を1ケタ減らして世界最高性能を達成した。低消費電力な人工知能(AI)機器の開発につながる。
リチウム固体電解質とダイヤモンドの界面を流れる電流を利用する。リチウム固体電解質でトランジスタを作り、時系列データを入力すると、界面にできる電気二重層によって複雑なスパイク電流が流れる。脳神経のスパイク形状に似た電流を再現できた。
リザバー計算をすると非線形変換処理で従来技術の15分の1から6分の1の誤差に抑えられた。この電気応答を調べると「カオスの縁」という秩序状態とカオス状態の境界状態にあると示唆された。カオスの縁は脳の情報処理が効率的である起源とされる。
カオスの縁を再現したイオニクス素子を集積して人工脳の実現を目指す。
日刊工業新聞 2022年12月27日