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食品ロス削減で連携、NTTと農林中金の親和性

金融で“解決”!!今そこにある課題 #03

課題/食品ロスの削減

食品ロスの削減機運が高まっている。国内における食品ロスの発生量は2020年度の推計値で前年比約8%減の522万トンで、5年連続で減少した。内訳は事業系が同11%減の275万トン、家庭系が同5%減の247万トンだった。政府は30年度の目標として489万トンを掲げる。削減努力は広がるものの、目標達成に向けて食品サプライチェーン(供給網)全体の連携や技術革新、削減支援サービスの普及・拡充がさらに求められる。

解決策/NTTと連携 地域循環後押し

農林中央金庫グループは8月、食品ロスの削減や食品廃棄物の有効活用をテーマにNTTグループと事業連携を始めた。NTT側が持つ食品ロス削減サービスなどの普及を促進するため、農林中金側が金融サービスなどで支援する。

農林中金とNTT―。「組織的にも親和性がある」と農林中金食農法人営業本部の林晋也営業第三部部長代理は話す。農林中金は、地域に根ざしたJAなど農林水産業者の協同組織によって設立された金融機関。他方、NTTも通信事業を核として地域に網を張る。「『地域循環』に関わり、地域に密接な課題」(林部長代理)として今回、食品ロスや食品廃棄物がテーマとなった。

NTTグループでは、NTTビジネスソリューションズ(大阪市北区)が食品廃棄物を堆肥化する装置をレンタル提供している。ビオストック(北海道帯広市)は食品廃棄物を使った超小型バイオガスプラントを提供。NTTコミュニケーションズは小売店舗向け食品ロス削減支援サービスを手がける。

今回の連携で対象となる顧客は小売業や飲食業、食品メーカーなど。顧客がNTT側のサービスを利用する際に金融面で支援が必要な場合は農林中金グループが適宜、リースや融資といったサービスを提供する。金銭的なハードルを下げて食品ロスや廃棄物の削減に取り組む顧客を後押しし、「今あるソリューションを普及させる」(同)。

農林中金グループは営業機能も活用する。食農関連事業者や系統団体など食品関係のサプライチェーンが取引先で、課題解決に向けたニーズを把握しやすい。吸い上げたニーズは両グループで共有し、「NTT側のビジネスと我々の取引先の課題をマッチングする」(同)。

今後も環境関連を軸に連携範囲を広げる考えだ。情報通信技術を使って人手不足といった課題解消につながる「スマート農業」などを念頭に置く。研究部門との連携も含めて、農業ビジネスでの協業を目指す。

日刊工業新聞 2022年12月02日

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