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商船三井が船舶に搭載へ、最大高さ53m「風力推進装置」の仕組み

商船三井が船舶に搭載へ、最大高さ53m「風力推進装置」の仕組み

入港した縮帆状態の「松風丸」(秋田県能代市)

商船三井は2025―29年にかけて風力推進装置12基を製造し、船舶に搭載する。新造船に加え既存船も対象とする。1本の帆当たり温室効果ガス(GHG)の排出量を5―8%程度削減できると予測。1隻に複数本を搭載することもできる。風力を船舶の推進力として利用する「硬翼帆(こうよくほ)」を搭載した「ウインドチャレンジャー」搭載船を多く運航し、50年のGHG排出量実質ゼロ(ネットゼロ)達成に貢献する。

ウインドチャレンジャーを搭載した最初の船舶「松風丸(しょうふうまる)」は、東北電力用の石炭輸送船として大島造船所(長崎県西海市)が建造し、10月に就航した。帆の材質は繊維強化プラスチック(FRP)で、4段式に伸縮する。最大で高さ53メートルまで伸びる。自動制御により帆の回転のほか、風が弱いと帆を伸ばし、風が強いと帆を縮める。

11月15日には豪州からの石炭を積み込んで東北電の能代火力発電所(秋田県能代市)に初入港した。従来の同型船と比べて燃費が改善し、帆1本当たりのGHG削減効果は日本―豪州航路で約5%、日本―北米西岸航路で約8%をそれぞれ見込む。

2隻目は米企業向けの木質ペレット輸送のバラ積み船に決定しており、大島造船所の建造で2024年竣工を予定する。

またウインドチャレンジャーの共同研究者である三井造船昭島研究所(東京都昭島市)のスーパーコンピューターを使い、複数船型の既存船に1、2本の帆を搭載するシミュレーションも実施。船体への応力や燃費改善効果などを調べたところ、既存船への搭載は可能という結果を得た。

ただ、長い期間使うほど燃費の改善効果が大きくなるため、「新造船に搭載する方が有利」(商船三井)な上、新造船と違って甲板上に帆を搭載するスペースを確保することが必要になるため、帆の位置が必ずしも最適化されないという課題もある。このため、搭載する船舶を慎重に選んでいく。

日刊工業新聞 2022年12月8日

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