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普及に大きな壁…コマツがそれでも「水素」に積極投資する理由

普及に大きな壁…コマツがそれでも「水素」に積極投資する理由

平塚市の研究拠点に設置しているFCテストベッド。小山工場に設置するものはこれより大型を計画する

コマツは2023年度までに小山工場(栃木県小山市)に合計30億円を投資し、水素エンジン燃料電池(FC)などの実験施設を整備する。水素エンジンやFCは、建設機械のカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)推進の切り札として期待が大きい。現時点ではどちらもコストや運搬手段、充電や給電インフラなどの点で大きな壁があるが「将来の成長の芽を育てるために先行投資は不可欠」(小川啓之社長)として積極投資を続ける。

30億円の内訳は出力1000キロワット以上のFCベンチ、水素供給インフラと水素混焼発電機、水素エンジンなど。FCは神奈川県平塚市にある研究拠点に16キロワットの試験設備を設置済みだが、小山工場のものはより大型で、実際の商品化を見据えた実験設備になる。

水素混焼発電機についてはデンヨーとの共同研究で50%の混焼に成功しており、今後はこれを100%水素専焼に高めていくことがテーマになる。

建機の環境対応として、コマツはリチウムイオン電池(LiB)による電動化も進めている。マイクロショベルのほか、23年3月に3トンクラスの次世代機種を投入予定。一方、中大型クラスの建機ではパワーと稼働時間の問題からLiBでは限界があるとみて、FCや水素エンジンの研究開発を急ぐ。

山奥の現場で稼働する建機や鉱山機械では24時間連続稼働などが求められる。水素エンジンやFC技術が確立するまではハイブリッドショベルやトロリー(架空線集電)などの手段も必要ととらえ、これらの研究開発も続ける。

日刊工業新聞 2022年12月8日

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