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リサイクルの課題解決へポリスチレン業界が乗り出す連携の構図

リサイクルの課題解決へポリスチレン業界が乗り出す連携の構図

透明のプラ容器を見分けるのは至難の業(左からポリプロピレン、PET、PS)

他プラとの分別に工夫を

国内のポリスチレン(PS)業界はリサイクルの課題解決に向けて連携を開始した。PSは食品スーパーで肉・魚を入れる白色トレーや発泡スチロール、透明な弁当容器・フタなどに使われるプラスチック。リサイクル拡大には他の透明プラとの効率的な分別やケミカルリサイクルが必要だ。業界内に加え、他業界とも知恵を出し合うことが求められる。(梶原洵子)

現在PSのマテリアルリサイクル率は輸出を含むものの23%でプラの中では高い水準。食品容器大手のエフピコなどの取り組みにより、白色トレーなどのわかりやすいPS廃プラの回収・利用が進んでいるからだ。だが、白色トレーなどのリサイクルだけでは量的に限界がある。そこで日本プラスチック工業連盟内にPSワーキンググループ(WG)を作り、18社・6団体が参画してリサイクル拡大に向けた検討で連携を開始した。

カギは、まだマテリアルリサイクルの少ない透明なPSの分別回収によるリサイクル原料の拡大と、PSを構成単位のスチレンモノマーに戻すケミカルリサイクル(モノマー化)技術の確立だ。

透明なPS廃プラの回収を増やすには、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)など他の透明プラと分別しなければならないが、人が見分けるのは至難の業。弁当などの容器の底などにあるプラ種類の小さな刻印に気付く人は少ない。

分別について、WGでは課題や解決提案を整理した。例えば、多くの消費者が分別しやすいようにPS表示を大きくする。シール・ラベルをPS化し、容器全体をPSにする。光学式装置を使って大規模にPSやPETを分別するため邪魔になるカーボンブラックによる着色の使用を止める、などが上がってきた。次の段階で実行に移すには、異業種や消費者との協力が求められる。

見分けやすい発泡スチロールにも課題がある。軽くて回収コストが高くつくため、機械メーカーと連携して回収現場で簡単に減容化する装置が必要だ。

また、マテリアルリサイクルは廃プラを粉砕・洗浄して再利用するもので、比較的に低コストだが、再生品を直接食品に触れる用途に使えないなどの制約がある。そこで再生後の品質を新品同等に戻せるモノマー化が注目されている。

東洋スチレン(東京都港区)やPSジャパン(同文京区)、DICとエフピコの3陣営はモノマー化技術に取り組むことを公表。今後、実証設備が稼働することで、詳細な技術課題や期待値が見えてくる。

日本スチレン工業会の出村公明専務理事は「PSは循環利用できることを示し、消費者に浸透させたい」とWGの目標を語る。現時点で課題は多いが、PSは他のプラと混ぜずに使われるため、高純度で回収しやすく、リサイクルしやすい部類だという。PSの状況はプラリサイクルの全体的な難しさを表しているとも言える。

プラ工連はPSの100%回収・有効活用を目標に掲げる。一つひとつ課題を解決し、PSのリサイクルを拡大するとともに、他のプラのリサイクルにも知見を役立てていくことが期待される。

日刊工業新聞 2022年12月06日

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