コロナ禍で露呈した日本の弱点、「マテリアルリサイクル」をどう強靱化するか
コロナ禍ではマスクなどの製品供給だけでなく、プラスチックリサイクルなどの静脈産業へも影響があった。廃棄物の分別など、不衛生環境での作業を外国人労働者などに頼ってきたためだ。輸出先のロックダウン(都市封鎖)もあり、回収や焼却処分が停滞した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センター(NEDO―TSC)の土肥英幸環境・化学ユニット長は「欧州はリサイクルメジャーが高い問題意識を持ち自動化などを進めてきた」と指摘する。コロナ禍で人や物の移動が停滞して、日本社会の弱い部分が顕在化した。そこで労働集約型からの脱皮を掲げる。多様な廃棄物を見分ける人工知能(AI)技術や分別ロボットアーム、高速ソーターなどを組み合わせた無人化リサイクル技術が、5年程度で実現すると見込む。
薬や機能性化学品の合成ではバッチ式から連続フロー式へ転換に注目する。バッチ式は化学反応を一つひとつ進める。対して連続フロー式は反応カラムを組み替えて小型の合成プラントを構築してしまう。土肥環境・化学ユニット長は「医薬品中間体など、コロナ禍で柔軟な生産システムが必要だと明確になった。フロー式の技術提案が増えており、今後開発が加速する」と説明する。
バイオマスも同様だ。日本は小規模でも成立するオンサイト型のプロセスに強い。おりしもレジ袋の有料化でバイオマスの利用が促された。水無渉バイオエコノミーユニット長は「資源自給率の確保は急務」と強調する。コロナに限らず、永久凍土が温暖化で溶け古代の感染症が復活する事件は、小規模ながら繰り返されてきた。「バイオマス開発と環境、感染症はつながっている」と説明する。
オンサイト型の生産プロセスは、分散的なマテリアル供給網の実現につながる。今後、コロナウイルスの再拡大や新規感染症で、特定の供給国がロックダウンすることも想定される。柔軟なプロセスで資源循環を強靱(きょうじん)化することが求められる。