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トヨタの新型クラウン、開発責任者が明かす突き詰めた“らしさ”の答え

トヨタ自動車ミッドサイズビークルカンパニー MSZ ZS チーフエンジニア・皿田明弘氏が語る

原点を見つめ直し、歴代開発責任者の思いや歴史を振り返りながら「クラウンらしさ」を突き詰めた16代目だ。現時点での答えは、快適性と安心感。タイヤの位置をできるだけ外側にしながら大径化することで堂々とした印象にすると同時に、見た目や走りの上質さにこだわった。

外見は車体のキレイな面を見せる点を重視した。走りではハンドルを切った際のじわっと動く反応や、超微細な振動を取り除きスッキリした感覚を実現した。こうした繊細さは日本特有の感性だろう。グローバル販売する今回の車両で“日本人らしさ”を世界に問うてみたい。

駆動装置(パワートレーン)はエコを実現する従来の2モーター式2・5リットルハイブリッドシステムのほか、2・4リットルターボエンジンと、電動駆動装置「eアクスル」を組み合わせた、1モーター式ハイブリッドシステムを初採用した。昔ながらの大排気量の気持ちよさを、小型化したターボとモーターの力で実現した。実はデビューはもう少し先の予定だったが、クラウンに合わせてかなり前倒してもらった。燃費は良くても退屈だと言われてきたが、十分にパワーを感じられるだろう。

内装は一つ一つの部品の機能を作り込み、デザインで統一感を出すようにした。ヒップポイントは前席が630ミリメートル、後席が610ミリメートル。セダンとスポーツ多目的車(SUV)の中間の高さで乗り降りしやすい。高い目線をしっかり確保しながらも視線を動かされにくいつくりにし、運転しやすさとくつろげる空間を両立している。

デザインや伝統の後輪駆動など、これまでの殻を破って大幅に変えた。社内からは「本当に大丈夫か」という心配の声が挙がったが、初代から続くチャレンジ精神もクラウン本来のDNAだととらえた。開発期間は従来の半分程度。組織の壁を取り払って情報を共有し都度現場で意思判断するやり方や、共通設計思想「TNGA」などの知見の蓄積が大きい。チーム全員が「いい車を作りたい」との信念を持っていたことも幸運だった。

「『面白いじゃないか』というものを世に問うことが原点だ」というのが、開発陣の合い言葉だった。華やかでワクワクする世界をクラウンでも楽しんでほしい。

【記者の目/新しいクラウン像定着カギ】

「クラウンと言えばセダン」というイメージを大胆に変えた意欲的なモデルだ。狙いの一つとみられるターゲット層の引き下げについては、30―40代から好意的な評価が聞こえる。それだけに半導体不足は悩ましい点だろう。新しいクラウン像の定着や、海外でのヒットが次なるテーマ。挑戦は始まったばかりだ。(名古屋・政年佐貴恵)

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スポーツ
日刊工業新聞 2022年11月24日

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