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インスリン投与を自動化、テルモが日本初システム実用化へ

インスリン投与を自動化、テルモが日本初システム実用化へ

メディセーフウィズのポンプ本体(右下)とリモコン(テルモ提供)

テルモは、糖尿病患者向けのインスリン自動投与制御システム「AIDシステム」の開発に取り組む。リアルタイムで測定した血糖データなどを人工知能(AI)で解析し、自動で適切にインスリンを投与する。高精度な血糖管理や患者の負担軽減につながる。テルモが長年培った糖尿病領域の技術に加え海外との連携により、日本初となる糖尿病治療システムの実用化を目指す。

糖尿病とは、血糖を下げるホルモンのインスリンが十分に働かず高血糖が続く疾患。そのうち1型糖尿病は、インスリンを分泌する細胞が壊されてほとんど分泌されなくなる自己免疫疾患で、インスリン療法が必須となる。日本の1型糖尿病の患者数は、10万―12万人と推定される。

テルモはこれまで、皮下に埋め込んでインスリンを投与する日本初のパッチ式インスリンポンプ「メディセーフウィズ」を展開してきた。さらに米デクスコム製の、連続的にグルコース濃度を測定する持続血糖測定器「デクスコム G6 CGMシステム」の国内での販売を担うなど、糖尿病治療領域で製品ラインアップの拡充に力を入れる。

テルモのAIDシステムは、これらの製品と仏ダイアベループ製のスマートフォン型端末「DBLG1」が連動した医療機器だ。デクスコム G6 CGMから送られるリアルタイムの血糖や血糖の推移といったデータをDBLG1のAIで解析。データに基づきメディセーフウィズから自動でインスリンを投与する。

AIDシステム(イメージ、テルモ提供)

テルモのメディカルケアソリューションズカンパニーで糖尿病治療関連製品を手がけるライフケアソリューション事業の木川善也プレジデントは、「症状は患者ごとに異なる。患者は医師の指導の下、食事内容や体質に合わせインスリン量を調整しながら生活している」と説明する。1型糖尿病患者はインスリン投与が欠かすことができず、また1日に何度も注射する必要があり、日常生活の妨げとなる場合もある。インスリン投与や血糖管理の自動化は、患者の負担軽減や生活の質(QOL)向上に貢献する。

現在、AIを搭載した医療機器の開発が活発化しているが、AIによる診断支援を目的としたものが多い。患者への医薬品投与にAIを活用するAIDシステムの場合、安全性や有効性を確認する必要がある。テルモは臨床試験に向け準備を進めており、日本初のAIDシステムの実用化に期待が高まる。(安川結野)

日刊工業新聞 2022年10月21日

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