ニュースイッチ

歯科インプラントの治療期間短縮へ、九州大が人工骨補充材料開発

歯科インプラントの治療期間短縮へ、九州大が人工骨補充材料開発

開発したハニカム構造の人工骨補填材(九大提供)

九州大学の林幸壱朗准教授らは歯科インプラントの基礎になる人工骨補填材料を開発した。インプラントを固定する骨が痩せてしまうと自らの骨を移植するなどして補強する必要がある。これを人工材料で置き換え、感染症などのリスクを抑える。化学組成が骨と同じで材料内での骨の成長が従来材に比べ2倍以上速く、短期間で治療を終えられる可能性がある。今後は歯科や整形外科向けに提案。企業と連携して実用化を進める。

炭酸アパタイトでハニカム構造の骨補填材料を開発した。骨と同じ化学組成なので骨に植えるとハニカム細孔内に新しい骨や血管が形成される。

ウサギの頭蓋骨に植えて試験したところ、骨と血管が材料内に向かって成長した。4週間で4ミリメートルと試験可能な厚みの限界まで成長する。硫酸カルシウム顆粒(かりゅう)の場合は骨形成因子を加えても2週間で1ミリメートル、8週間で3・2ミリメートルにとどまる。インプラント手術で自らの骨を移植した場合は、4―6カ月待った後にインプラントを埋める。そのため治療期間を大幅に短縮できる可能性がある。

さらにハニカムの細孔の大きさを調整することで感染症リスクを減らした。従来は細胞遮断膜で繊維細胞の侵入を防ぎ、骨材料内に軟らかい組織が形成されることを防いでいた。そこで細孔径を230マイクロメートル(マイクロは100万分の1)に狭めて侵入を防いだ。軟組織形成よりも骨形成が速いため細胞遮断膜が不要になる。この遮断膜が口腔(こうくう)内に露出すると、そこから細菌が侵入する可能性があった。

詳細は日本セラミックス協会が9月1日にオンラインで開幕する「第34回秋季シンポジウム」で発表する。

日刊工業新聞2021年8月26日

編集部のおすすめ