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CO2排出しない「全電気溶融炉」活用、日本電気硝子の脱炭素化への道筋

日本電気硝子は、ガラス製造の主力炉であるガス燃焼炉を、電気加熱でガラス原料を溶融する全電気溶融炉への転換を進める。同炉は二酸化炭素(CO2)を排出しないのが特徴だ。加えて、環境負荷が低いとされる水素燃料を使った同溶融技術の開発も始めた。同社のガラスは量産中のものだけで数百種類ある。2050年までに、それら全ての製造工程の脱炭素化に挑む。

日本電気硝子は燃料を酸素で燃焼させる、温室効果ガス削減能力と省エネ性の優れた酸素燃焼炉を国内でいち早く導入した。燃焼時の温室効果ガス排出量が少ない天然ガスを燃料にするなど、以前よりガラス製造工程の脱炭素化・高効率化を進めてきた。

そんな同社が近年注力するのが、溶融ガラスに電極を挿入し、通電することで直接加熱する電気溶融技術だ。ガス燃焼炉で原料を間接的に加熱する従来方法よりエネルギー効率が高く、CO2排出量を削減できる。現在、同技術はガス燃焼炉で併用しており、同社の溶融エネルギーに占める電気比率は約40%。今後、電気エネルギーだけで溶融する全電気溶融炉の実装を加速させ、同比率を高める。

一方、電気抵抗が低く発熱しにくい一部のガラスは電気溶融が難しい。こうしたガラスに対応するため、同社は水素を燃焼できるバーナーを開発した。燃料は天然ガスと水素で切り替えでき、両燃料の混焼でも水素のみでも、流量調整だけで天然ガスと同等のガラス溶融能力を発揮。同社プロセス技術本部の高谷辰弥製造技術部長は「(水素を)10%でも混ぜれば、(CO2排出量を)10%減らせる」と語る。30年の技術確立を目指している。

現在、燃料として水素価格が世界的に高いことなどから、工場への早期実装は現実的でないという。ただ、「水素インフラの整った地域から実装できるよう、技術だけは先に確立しておく」(高谷部長)と将来を見据える。今後、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを燃料として利用するための技術開発を始める計画だ。全方位戦略で脱炭素社会実現に取り組む。

日刊工業新聞 2022年8月9日

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