自動運転レベル4・5の市場形成に必要な視点
世界のモビリティー産業がカーボンニュートラル達成に向けてアクセルを踏んでいる。しかし、エネルギー不足や半導体の供給不安などを背景に市場の見通しを見極めることは難しい。そこで、モビリティー産業の動向を調査するS&P Global mobilityのアナリストたちに未来を見通す上で持つべき視点などを語ってもらう。
自動運転は社会実装に向けた実証が世界中で進む。S&Pグローバル・モビリティーのアナリストはこの市場をどう見るか。シニアリサーチアナリストの松原正憲氏と、ソフトウエアリサーチ・ダイレクターのタウィッド・カーン氏が語る。
日本は法整備で最も整っている/松原正憲氏
日本は自動運転に関わる法整備について世界でもっとも整っているといえる。自動運転レベル4、5に関する技術もトップレベルだろう。
一方、課題は実環境での走行データ量が米国に比べると少ない点だ。自動運転レベル4、5の市場は、現在の個人所有の乗用車市場の延長線上ではない。まったく新たな市場で、規模は限定的なもの(過疎地域の公共交通の補完、交通弱者対策、人手不足)になると予測している。そのため、市場規模に頼らないビジネスモデルが安定的・継続的な市場形成に必須だろう。
ミドルウェアの重要性が高まっている/タウィッド・カーン氏
自動車メーカー各社は、車両機能の開発を車両プラットフォームから分離する方向に取り組んでいる。ソフトウエアプラットフォームのライフサイクルを車両プラットフォームのライフサイクルから分離し、両方のプラットフォームを個別に開発したり保守したりできるようにしている。
自動車メーカー各社は、ミドルウエアの重要性の高まりと、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)ビジネスモデルをサポートするAPIの役割の重要性を認識している。この状況を好機ととらえた自動車部品メーカー各社は、コンソーシアムのパートナーと共に、ミドルウエアを開発するためのフレームワークを導き出す競争をしている。
世界のソフトウエア向け支出は、ミドルウエアの開発だけで6%の割合で増加しており、今後数年間は着実に増加し続けるだろう。自動車ミドルウエアの収益は、年間成長率10%程度で、中期的に健全な成長を遂げると見られる。これは、完成車メーカーが内製するプラットフォームサービス機能の販売と、サプライヤーやコンソーシアムのパートナーのソフトウエア販売が推進要因となる。
参加費:55,000円(税込)