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財務状況悪化する日産系部品メーカーの「再建のカギ」

財務状況悪化する日産系部品メーカーの「再建のカギ」

河西工業公式サイトより

河西工業の財務状況が悪化している。新型コロナウイルスの感染拡大や半導体などの部品不足で、取引先の自動車メーカーの減産が相次ぎ、ドアトリムなど車内装部品の販売が減少。2022年3月期の連結経常損益が2年連続の赤字となり、銀行3行との融資契約に盛り込まれた財務制限条項に抵触した。

河西工業は拠点の統廃合などで黒字転換を図る25年3月期まで3年間の中期経営計画を策定。併せてりそな銀行など8社と総額303億円のシンジケートローン契約を5月に結び、安定的な資金調達にもめどをつけた。

同社は車の減産影響を受け、22年3月期の売上高がコロナ禍前の19年3月期と比べ約4割も減少。この間、生産子会社の再編や早期退職の実施など「固定費の削減を徹底した」(同社幹部)が、22年3月期まで3年連続で当期赤字となった。

財務体質も悪化した。22年3月末の純資産は19年3月末と比べ約5割減少した一方、有利子負債は同2・1倍に拡大。40%を超えていた自己資本比率は22年3月末までに15・6%まで低下した。

資金繰りでは手元の現預金が月商の何倍かを示す手元流動性比率が22年3月末で2・3倍と、安全の目安とされる2倍を上回る。ただ22年3月期のフリーキャッシュフローは15億円の赤字(前期は117億円の赤字)と、資金流出が続く。

再建のカギを握るのが主力の日米事業の立て直しだ。中でも北米事業の22年3月期の営業損益は原材料費や労務費の上昇などで121億円の赤字(同85億円の赤字)。車各社の直前の生産計画変更で、実際の生産規模より多く人員や部材を抱え、損益を圧迫した。

中計では米国から労務費の安いメキシコへの生産移管などで固定費を圧縮。同事業の23年3月期の営業損益は9億円の赤字と、約110億円の赤字幅の縮小を見込む。ただ22年4―6月期の営業損益は38億円の赤字(前年同期は15億円の赤字)と悪化。23年3月期もコロナ禍前の水準まで車生産の回復は見込めないが、渡辺邦幸社長は「黒字体質にしていく」と覚悟を示す。


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日刊工業新聞 2022年09月22日

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