中国深耕する自動車部品メーカーたち、それぞれの勝負所
自動車部品サプライヤーが中国資本の自動車メーカーへの攻勢を強めている。エンビジョンAESC(神奈川県座間市)は中国で低コストな車載電池の生産能力を増強し、乗用車だけでなく商用車の需要を取り込む。パイオラックスは現地で生産品目や能力を増やして受注を拡大する。現地化で開発スピードやコスト競争力を磨き、品質や性能といった強みの訴求力を高めて、現地サプライヤーとの差別化を図る。
エンビジョンAESCは中国・内モンゴル自治区のオルドス市で、比較的コストが安いリン酸鉄リチウム(LFP)を正極材に使う、車載電池の生産を4月にもはじめる。中資系車メーカーの電気自動車(EV)トラックやバス向けに供給。年産能力は3ギガワット時から数年後に数十ギガワット時への増強を予定する。
江蘇省無錫市の拠点ではLFP以外に、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)を使う電池を生産。外資との合弁や中資系の車メーカーの乗用EV向けに供給する。松本昌一社長は中国での工場立ち上げは日米欧と比べ約2倍のスピードが求められ「その中でしっかりとした品質をつくり込めるかが勝負」と指摘。日本から技術者を送り込むなど体制を拡充して競争力を高め、これまで培った世界基準の品質や安全性を維持・強化する。
パイオラックスは中資系車メーカーから、日米欧の車各社に広く採用されている開閉機構部品を突破口に、燃料タンクや駆動装置向け部品などの受注を拡大。湖北省武漢市の工場で生産設備を増強し、現地供給体制も強化する。島津幸彦社長は中国事業の売上高に占める中資系メーカーの比率を「現状の5%弱から30%程度に高めたい」としている。
曙ブレーキ工業は高性能ブレーキへの引き合いが強いEVやスポーツ車向けで中資系メーカーの需要を取り込む。シミュレーション技術などを駆使して納期を半減した。米国の新興EVメーカーからも高性能や短納期といったブレーキの需要は強いとみて同国でも提案を積極化する。
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