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バリ取り工程自動化を実現したNITTANの「逆転の発想」

バリ取り工程自動化を実現したNITTANの「逆転の発想」

手作業だった切削加工後のバリ取り工程をすべて機械化した

NITTANが工場の自動化範囲を広げている。切削加工後のバリ取りではロボットの活用ですべて機械化し、外観検査では人工知能(AI)による自動化に乗り出した。いずれの工程も高い集中力が求められ、作業者の負担も大きかった。一方、車の電動化で主力のエンジンバルブの需要縮小が見込まれ、新商品の開発に力を入れる。競争力を高めるには生産性の向上が欠かせず、自動化を後押しするモノづくり人材の育成にも力を注ぐ。(西沢亮)

「逆転の発想だった」。安藤輝明取締役事業本部長は、本社工場(神奈川県秦野市)で手がけるパーキングブレーキ用部品のバリ取り工程自動化の要因をこう振り返る。

同部品は複雑形状でバリ取り箇所は約20カ所。当初はロボットにバリ取りツールを装着して加工する一般的な手法を試したがうまくいかず、逆にロボットがワーク(加工対象物)を持つ手法に変更。不二越の小型垂直多関節ロボット3台が、部品のバリ取り姿勢を制御しながら、ツールを固定した各加工工程間を移動し、受け渡していくシステムを構築した。6人が手作業で仕上げていたバリ取り箇所を全て機械化し、工程のオペレーターを2人にまで削減した。

また各加工ツールにはダンパー機構を採用。ロボットがワークを深く押し当てた場合に、ツールが“柳腰”のように下がることで「部品ごとに異なるバリの位置や形のバラつきを吸収し、安定稼働を実現した」(坂根鋼治生産技術部長)。こうしたモノづくりのノウハウは、1990年代に導入したエンジンバルブの熱間鍛造工程の自動化などで蓄積。以前は熱く黒煙が出る作業環境だったが、ロボットの活用などで無人化を実現した。

AIを活用して歯車やエンジンバルブの外観検査の自動化にも取り組む

外観検査の自動化にも力を入れる。傘形状の歯車をロボットでつかみ、回転しながら全周をカメラで撮像。歯面のキズなどをAIで判定するシステムを開発する。2023年3月期中に導入し、検証を重ねる。ただ光の反射で歯面の画像品質が安定しないなど本格導入には課題も残る。現在は1日数千個の歯車を8人の作業者が目視で全数検査する。桧村雅人上席執行役員は「長時間集中力が求められる検査の負荷を何とか減らしたい」と強調。エンジンバルブでも同様の取り組みを進める。

NITTANは自動車向けを中心に小型エンジンバルブが売上高の約8割を占めるが、車の電動化でエンジン需要の縮小を見込む。そこで19年に30年までの中長期戦略「NITTANチャレンジ10(NC10)」を策定。既存事業の付加価値を高める一方、需要が拡大する電動車向けに増・減速機など新商品の開発を積極化する方針を打ち出した。

新商品では開発力だけでなく、量産化までのスピードや価格競争力が欠かせない。エンジンバルブ以外の生産技術も求められ、安藤取締役事業本部長は「ロボットシステムのプログラミングや複合加工機の取り扱いなど基本的なモノづくりの力が試される」と指摘。省人化で生産性を高める一方、人材育成にも力を入れNC10の達成を目指す。

日刊工業新聞2022年8月30日

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