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社長人事にM&A2件、モリタHDのこれからの課題

モリタホールディングス(HD)は4月、持ち株会社へ2008年に移行後初めてモリタHDと、消防車事業を手がける子会社モリタ(兵庫県三田市)の社長兼務を解いた。同月、モリタの加藤雅義社長が取締役から昇格し、6月には金岡真一モリタHD社長が就いた。14年を経て、グループ経営を率いるモリタHDの役割をさらに進化させようとする。

モリタHDは22年3月期の売上高が836億円。移行前年の08年3月期比で80・6%増加した。この間、旧宮田工業(現モリタ宮田工業)とフィンランドのブロント・スカイリフトを買収し、事業を押し広げた。金岡社長は「HD経営で再編しやすくなり、大きなM&A(合併・買収)を2件実施できた。事業会社各社は経営を迅速にかじ取りできる」と、成果を強調する。

事業会社を中核の消防車、防災、産業機械、環境車両の四つに分けながら、社会インフラ(基盤)の防災・環境で横串を通す。19年に旧宮田工業の自転車事業を売却し、防災・環境へ明確にシフトした。「4事業は近いようで異なる」(金岡社長)が、社会インフラを針路とする方向性を明確に映し出す。

モリタHDは体制やモリタとの関係を確立するまで、社長を兼任させてきた。社長を分離し負担も減らし、事業スピードを上げる。一方で、モリタHDの中島正博会長兼最高経営責任者(CEO)はモリタ会長を続ける。事業会社への目配りを怠らず、求心力も保とうとする。

モリタHDは新分野や海外などグループの長期戦略を担い、事業会社は既存事業で収益を伸ばす相補的な関係構築が課題になる。事業は手堅く財務基盤が強固で、親子上場もない。だが投資家はモリタHDに次の一手となる成長戦略を求めている。「手段の一つはM&A。グループ成長のため意識して当たる」(同)。4事業の枠内でグループを増やす意欲を示す。次の成長ステージへジャンプできるのか、持ち株会社の役割は重要度を増す。

日刊工業新聞2022年9月8日

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