ニュースイッチ

大林組が中計の財務指標に「ROIC」を初導入して狙う効果

大林組は2022年度から5カ年の中期経営計画で、財務指標として初めて投下資本利益率(ROIC)を導入した。投下する資本全体をベースに、資本効率の向上を重視。5%以上の確保を目標に掲げる。保有資産を抑えて経営効率を高める「アセットライト」な建設事業においても、運転資本や固定資産の回転率を上げるような効果を見込む。

ROICの導入にあたり、建築や土木、開発といった本社の事業部門でROIC向上に寄与する指標や取り組みを“分解”。これを本支店や部課、個人レベルまで落とし込み、これまで指標としてきた株主資本利益率(ROE)では実務とつながりにくい課題を解消した。小寺康雄副社長は「現中計を自分事として捉えてもらえた」と手応えを示す。

もう一つ重きを置くのが、ROICの向上につながる連結営業利益の拡大だ。目下の課題は、1000億円台の回復。15年度から6期連続で1000億円を上回っていたが、大型工事の採算悪化が響いた21年度は410億円まで縮小した。現中計における目標1000億円は「再スタートを切るためのボトムライン」(小寺副社長)という位置付けだ。

ただ、大型工事を巡る激しい受注競争は今後も続く見通し。このため、建設事業の採算性を示す完成工事総利益率の改善に着手。一定以上の利益が見込める改修工事の割合を現状の14%程度から20%以上に拡大するほか、医療・スポーツ施設やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)関連の提案力を強化。収益力を引き上げる考えだ。

一方、開発事業への積極投資は継続。現中計の投資計画6000億円(前中計は4800億円)のうち、3000億円を充てる。不動産投資信託(REIT)も活用し、フィービジネスへの移行を推進。投下資本をなくすことで、ROICの向上につなげる。22年3月期末の自己資本は約9556億円。自己資本比率40%を目安に積み上げていく。

日刊工業新聞2022年7月7日

編集部のおすすめ