三菱電機が描く「強い事業ポートフォリオ」の中身
成長投資拡充、付加価値を創造
三菱電機は2021―25年度の現中期経営計画で、前中計比約26%増となる累計3兆4000億円の調整後営業キャッシュフロー(CF)創出を財務目標に掲げる。増田邦昭常務執行役兼最高財務責任者(CFO)はこの目標で「成長投資の原資を稼ぎ、成長の結果として株主還元を増やす方針を示した」と説明する。創出したCFをM&A(合併・買収)などを含む成長投資に優先して充てていき、強い事業ポートフォリオをつくる狙いだ。
総資産に対する借入金比率(リース負債除く)も主要な財務目標だが、21年度末実績は4・3%と健全な状態を維持する。調整後営業CFは21年度創出実績が4800億円弱。コロナ禍や部品・半導体不足を背景に棚卸資産が膨らんだことを除けば「オントラック(順調に進んでいる)」(増田CFO)とする。
ただ、22年4―6月期は中国・上海ロックダウン(都市封鎖)のマイナス影響を受けた。「資産の増加は状況を見ながら適正水準に持って行く。ロックダウン影響のリカバリー(回復)も課題になる」(同)と気を引き締める。
売上高5兆円、営業利益率8%という前中計目標を達成していないこともあり、調整後営業CFの目標が高いとの見方もあるが、「ポートフォリオ戦略を実行すれば十分達成できる」(同)と意欲を見せる。工場自動化(FA)制御や空調冷熱など成長性の高い事業に集中投資する一方、低収益事業は新たな付加価値を創造し、安定収益を生む「レジリエント事業」へと転換を図る。転換が難しい事業は売却や撤退も検討する。すでに液晶事業の縮小や工業用ミシン事業の合弁化なども決定済みだ。
電機業界では日立製作所のように事業ポートフォリオを大胆に入れ替える戦略もみられるが、「当社は入れ替えありきでなく、社会課題の解決に貢献する上で欠けているところを補う」との考え。ポートフォリオの見直しを加速して環境変化に強い体質づくりを急ぐ。
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