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三菱電機「パワー半導体」大口径化に着手、初の12インチウエハーライン新設

三菱電機「パワー半導体」大口径化に着手、初の12インチウエハーライン新設

三菱電機のパワー半導体製品(イメージ)

三菱電機は広島県福山市の電力制御用パワー半導体工場に同社初の12インチ(300ミリメートル)ウエハーラインを新設する。シャープから買い取った工場をパワー半導体製造向けに転換する工事中で、11月の稼働開始を予定。自動車の電動化や再生可能エネルギー導入拡大などの脱炭素需要が急伸しており、欧州勢に後れを取っていた大口径化に着手して増産対応とともにコスト削減を狙う。

国内最大手の三菱電機は稼働準備中の広島県福山市のパワー半導体工場に12インチウエハー対応のパイロットラインを導入する。もともとシャープの福山事業所の一部だった工場には既設の8インチラインがあった。

クリーンルーム内に大口径の新ラインを設置し、量産化を含む今後の技術開発・設備投資の方向性を見極める目的がある。総投資額は土地・建物取得費用を含めて約200億円だ。

前工程の生産体制は福岡市西区と熊本県合志市の拠点が中心で、今回新たに福山市の工場が加わる形だ。従来は6インチと8インチラインだけだった。三菱電機は機器の省エネルギーに役立つパワー半導体を重点成長事業の一つと位置づけ、21―25年度の5年間に計1000億円の設備投資を計画。その結果、25年度の売上高は20年度比60%増の2400億円以上を目指す。

12インチウエハーでの量産は世界最大手の独インフィニオン・テクノロジーズが先行し、スイスのSTマイクロエレクトロニクスもイタリアに12インチウエハー対応工場を建設中だ。

日本勢は東芝が石川県能美市の既存工場内に12インチウエハー対応のパイロットライン導入を進めており、23年度上期の稼働を予定。

富士電機は12インチの技術開発を続ける一方で、HDD用記録媒体の生産を終えたマレーシア工場のクリーンルームをパワー半導体の8インチウエハー生産に転用するなど当面8インチ中心に投資を加速する方針だ。


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日刊工業新聞2021年8月30日

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