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災害時・迅速復旧のカギ握る新方式「光網」の世界

従来の光通信装置は単一のベンダーにて関連する機能が全て実装された一体型の光通信機器となっている。従来の光網(レガシー光網)は通常あるベンダーの一体型の光通信装置を利用してベンダー独自の技術で構築され、そのベンダーに強く依存している。このため、レガシー光網の応急復旧では製品の在庫不足があるだけで復旧ができなくなるリスクが高くなる。

この問題は大規模災害時により深刻になる。近年、単一ベンダーの一体化された光装置を機能ごとに分割し、異種ベンダー製品を組み合わせて最適な通信システムを構築するというディスアグリゲーション方式、さらにシステム構築・制御管理方式のオープン化が検討されている。この新方式では異種ベンダー製品の利用で災害時の応急復旧時における資源不足問題を質的に改善できる。そのため、私は今後、ディスアグリゲーション+オープン化の徹底が必須と強く感じている。

ディスアグリゲーション+オープン化による新方式光網の研究開発は途上で、今後の光網が備えるべきであるレジリエンシー強化の研究は空白の状況となっている。特に、ディスアグリゲーション装置の構成・機能は多様で光網の複雑性はレガシー光網より大きく、新方式光網のレジリエンシー強化はより難しくなる。

また今後、新方式光網とレガシー光網が共存するヘテロな光網は一層複雑になり、レジリエンシー強化は未踏の挑戦である。現在、図(右)に示すディスアグリゲーション方式に基づいた軽量可搬型応急復旧光装置を用いて、災害などでレガシー光網が失った機能を迅速に応急復旧可能とする研究を推進している。

また、ディスアグリゲーション環境の元では多様性対応が必須である。そこで、産業技術総合研究所、KDDI総合研究所と連携し、任意の機器構成からなる一般化された光ネットワークを統合管理制御可能とする普遍的なモデル化の先行研究を展開している。今後はさらに、オープンな仕様策定にも挑んでいくつもりである。

ネットワーク研究所・レジリエントICT研究センター・ロバスト光ネットワーク基盤研究室 主任研究員 徐蘇鋼(ジョ・ソゴウ)

2002年東大大学院博士課程修了。02年早大国際情報通信研究センター助手。05年より現職。レジリエントな光ネットワーク技術の研究開発に従事。博士(工学)。
日刊工業新聞2022年8月23日

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