【ディープテックを追え】わさび栽培にイノベーション、自動栽培と栽培期間短縮を狙う
閉鎖空間で野菜などを生産する、植物工場が普及してきた。この潮流に乗り、NEXTAGE(ネクステージ、東京都目黒区)はわさびの自動栽培モジュールを開発する。同社は栽培期間を短縮できる栽培方法と栽培モジュールを組み合わせ、実現を目指す。
生産量は減少続く
わさびは澄んだ水のある冷涼な土地で生育する。日本では静岡県や長野県で栽培される。ただ、気候変動によるわさび田への被害や水源の枯渇、従事者の減少などの課題を抱えている。それに並行するように国内のわさび生産量は減少が続く。農林水産省の「特用林産物生産統計調査」によれば、2020年のわさび生産量は約2000トンと、05年に比べ半分以下まで落ち込んでいる。
こういった課題がありながら、事業としてわさびの自動栽培を手がけるのは難しかった。冷涼な土地での生産に限定される上、2年間ほどの栽培期間が必要なためだ。同社はこの栽培期間を短縮しつつ、自動栽培できるモジュールでこの課題の解決に挑む。
早く育つメリットも
技術の肝は栽培に適した環境を制御する点だ。温度や水の流速などの環境データや植物の様子から、わさびの栽培に適した環境を制御する。センサーなどの計測器のデータに加え、カメラから取得した葉や茎を画像から、わさびの生育状況を予測する。
20度C以下の気温が最適とされるわさび生産において、中村拓也代表は「室温でも育てられる」と自信を見せる。水温や水流など、気温以外の指標をコントロールすることで、温暖な場所でも育てられるようになるという。またこの手法を使うことで、10カ月で50グラムのわさびを育成できるなど、促成栽培のメリットもある。
同社はこの栽培方法と栽培モジュールを統合して、23年から販売する。既存の20フィートや40フィートコンテナに栽培に必要な計測器などを搭載して提供する。製品化に向けてはトヨタ紡織やヤマハ発動機などと協力する。同時に自社でも同モジュールを使い、わさびの栽培を始める。海外への展開も狙う。機器の販売だけでなく、栽培方法の普及を目指す。
将来は消費地の近くで栽培する「モバイル農業」やわさび以外の農作物へ技術を生かす。中村代表は「世界中で同じレシピを使い、地域の需要に合わせた栽培できる環境を実現する」と意気込む。
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