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半導体ウエハー洗浄時のナノ構造倒壊、北大などが撮影に成功した意義

半導体ウエハー洗浄時のナノ構造倒壊、北大などが撮影に成功した意義

左上から右下にかけて、ナノサイズの柱の間でIPAが残り柱同士を接着する連続写真(北大提供)

北海道大学の木村勇気准教授らはSCREENホールディングスと共同で、半導体ウエハーの洗浄時に微細構造が壊れる様子を撮影することに成功した。透過型電子顕微鏡の真空中で液体に濡れたナノ構造体を乾燥させる。わずかに残った水が表面張力で構造物を倒壊させた。先端半導体製造プロセスの課題解決につながる。

半導体の洗浄では洗浄液を表面張力の小さい2―プロパノール(IPA)に置換してから乾燥させる。それでもシングルナノ(ナノは10億分の1)と呼ばれる製造プロセスではナノ構造の倒壊が起きていた。そこで電子線を透過しやすい薄膜で溶液セルを作製し、液体とナノサイズの柱が林立するナノ構造体を電顕の中に入れて乾燥過程を観察した。

すると蒸発が進むと液面は下がるが、柱同士の隙間に表面張力で液体が残る現象が観察された。さらに蒸発が進むと隙間にのみ液体が残る。最終的にはIPAで洗い流しきれなかった水が柱と柱の先端を接着するように残り、ナノ構造体を倒壊させる。

乾燥過程を撮影できるため、不良の原因を特定して半導体設計や洗浄工程などのどこに問題があったのか追究できる。

倒壊しやすい構造を特定して設計段階で回避可能になる。

日刊工業新聞2022年8月3日

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