「白物家電」生産を脱炭素化、パナソニックが「低温ハンダ」で電力3割減
パナソニックは白物家電に使う大型電子部品を融点が139度Cの低温ハンダで実装する技術を確立した。ハンダを溶かす温度が下がるため、プリント基板に部品を装着する実装工程の電力消費量を3割低減できる。材料コストの低減も見込める。7月からドラム式洗濯機と一部の炊飯器の量産に採用した。白物家電に導入を拡大し、モノづくりで脱炭素に貢献する。
低温ハンダの材料はスズとビスマス。溶けて吹き上がるハンダ上にプリント基板を送り、基板に部品を装着するフロー実装に採用した。従来は基板から部品が落下するなどの課題があったが、実装条件を最適化した。実装後の衝撃強度や基板に力が加わった時のハンダ接合部を検証し、量産に導入しても問題ない品質を確認した。
従来、低温ハンダは低電流・低電圧で作動する小型部品を装着するリフロー実装に導入し、洗濯機の表示部品の量産に採用されてきた。フロー実装は大電流・大電圧で駆動する大型電子部品の装着で使われており、白物家電の量産に低温ハンダの利用を拡大できた。
鉛を含まない鉛フリーハンダはスズと銀、銅の合金が多く、融点が200度C以上と高く、実装温度も高く設定する必要があった。今回の低温ハンダはビスマスとスズが材料。組成はビスマスが58%、価格が高騰しているスズを42%に抑え、材料コストも低減できる。他の鉛フリーハンダの組成はスズが100%近くを占める。
運転時に高熱を発しないなどの条件を検証し、低温ハンダによるフロー実装を採用する家電を増やす。パナソニックの白物家電全部に採用すると年110トンの二酸化炭素(CO2)排出削減が見込まれる。パナソニックホールディングスは2030年までに全グループ工場のCO2排出量ゼロを目指している。
日刊工業新聞2022年8月3日