マシニングセンター専業・キタムラ機械が推進するAI活用法
マシニングセンター(MC)専業のキタムラ機械(富山県高岡市、北村彰浩社長)は、独自のコンピューター数値制御(CNC)装置「Arumatik-Mi」を軸に、工作機械における人工知能(AI)の活用を進めている。AIがMCを自動で運転する機能に磨きをかけ、習熟が必要な工作機械の操作を容易にする挑戦を続けている。
同CNCに搭載可能な機能「Auto―Part―Producer」は加工に必要な各種条件の選択や加工プログラムの作成をAIが行い、MCを自動運転する。この機能は特許を取得済みだ。
一般にCNCに入力する加工プログラムは使用する切削工具の種類や加工時の工具の座標、移動量などの条件を設定する必要があり、熟練した技能が求められる。だが、Auto―Part―Producerは読み込んだコンピューター利用設計(CAD)データを基にAIがこれらの作業を実行するため、熟練者のプログラム作成が不要になる。
同社ではこの自動運転機能を進化させ、遠隔操作をも実現しようとしている。事務所や外出先からCADデータを第5世代通信(5G)を介して送ると、MCが全自動で部品を製造する「Auto―Part―Producer 5G」をNTTドコモとともに共同開発中だ。そのための開発拠点として、2021年3月に本社工場内で5G通信を可能にした「キタムラ・イノベーション・ファクトリー(KIF)」を開設した。
この機能は加工プログラム作成のデータ処理をクラウド上で行い、そのデータを5Gでリアルタイムに機械に伝送する。遠隔操作や複数の機械の制御を1人でできるようになり、現在のAuto―Part―Producer以上の省人化につながる。
また、CNC自体に高性能なデータ処理機能を持たせる必要がなくなるため、従来より3割程度安く同機能が導入可能になる見込み。
遠隔操作による自動運転が実現すれば「移動が制限されてもオンラインで生産できるシステムの構築や、後継者や人材不足に苦慮する加工業者の負担を軽減できるイノベーションの始まり」と北村社長は胸を張る。
同社では今後、8月に5Gを用いたクラウド処理とリアルタイム加工の技術検証をKIFで実施し、23年4月に新機能を搭載した次世代のMCを市場に投入する計画だ。(江刈内雅史)
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