SDGs追い風、兼松がコーヒー豆の輸入を倍増させる狙い
兼松は、コーヒー豆の輸入を現在比2倍の年間8000―1万トンに引き上げる。全体量と同時に、安定的な収益が確保できる「スペシャルティコーヒー豆」の輸入を増やすのが狙いだ。同コーヒー豆の生産には熟練が必要なことから、生産者と取引先をマッチングするなど生産者をサポートしながら段階的に実現する。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を追い風に日本市場で同コーヒー豆を拡販していく。(編集委員・中沖泰雄)
スペシャルティコーヒー豆とは輸出等級や生産地を問わずに客観的な味覚評価で80点以上をクリアするとともに、生産国特有の味覚を有し、これらの条件を満たした上で持続的に生産できる豆のことをいう。1980年代から米国の業界団体が提唱している。
同コーヒー豆の生産には熟練者の確保と生産環境の維持が必要なため、当時からサステナビリティー(持続可能性)という考えが根付いており、最近のSDGsと結び付き、取り扱うことで、「社会に貢献できる」(食品第一部飲料・酒類課の江藤雄介課長補佐)。
また一般的なコモディティコーヒーと比べて価格は数倍から数百倍で、客観的な基準があるため、相場の影響を受けにくい。
兼松は00年頃から同コーヒー豆の輸入を先行して始めた。日本に輸入されるコーヒー豆は年間40万トンで、その内、同社のシェアは1%だが、スペシャルティコーヒー豆の比率は80%と高く、今後もこの比率を維持する。
大規模農家が多いブラジル産を中心に取り扱う。コロンビアやエチオピアでは良質なコーヒー豆が生産されるものの、小規模農家が多いことから、安定調達に懸念があるためだ。
ブラジルのダテーラ農園とは23年で取引がスタートしてから20年になる。農園の敷地面積は6800ヘクタールで、JR東日本の山手線内側の面積よりも大きい。敷地の50%は農園で、残りは滝があるなど自然保護区域となっている。
生産者が同コーヒー豆を生産し続けられるように、総合商社のネットワークを駆使して収集した情報を提供し、品質アップを可能にするほか、展示会への出展で農園を紹介するなど全面的にバックアップする。
地球の温暖化で生産適地の標高が上昇しているほか、経済活動再開に伴う人手不足による人件費高騰、肥料不足など課題はある。ただ、江藤課長補佐は「仕事に誇りや喜びを持ち、従業員の満足度が高い農園ほど品質の高い豆が生産される傾向がある」と言い切る。
従業員の満足度が高ければ、定着率はアップし、熟練度も上がり、良質なコーヒー豆が生産される。このようなプラスの循環を実現するためにも生産者と足並みをそろえてスペシャルティコーヒー豆事業に取り組む。