レースタイヤで活用相次ぐ「サステナ素材」の中身
タイヤメーカーが、サステナブル(持続可能)な素材を用いたタイヤを相次いでモータースポーツに活用している。横浜ゴムは米国のカーレースで、バイオマス由来のブタジエンゴムを用いたタイヤ「アドヴァンA052」を初投入。ブリヂストンは8月に乾燥地帯原産の低木「グアユール」由来の天然ゴムを使ったタイヤを初めて採用する予定だ。走りの楽しさを追求するレースでも環境に配慮した取り組みが不可欠となっており、各社は対応を急ぐ。レースで培った知見は市販品の開発にも活用する考えだ。(江上佑美子)
ブリヂストンは、グアユール由来の天然ゴムを用いたタイヤを8月に米テネシー州で開催されるレース「ビッグ・マシン・ミュージック・シティ・グランプリ」で初めて投入し、性能を実証する予定だ。
現在タイヤに使われている天然ゴムは、ほぼ全てがパラゴムノキ由来だ。パラゴムノキの9割超は東南アジアで栽培されており、病害リスクや資源保護の観点で課題となっている。ブリヂストンは代替素材として、乾燥地帯で育つグアユールに着目。2030年までの実用化を目指し研究開発に取り組んでいる。「他社との連携も進め、調達の問題解決を図る」(ブリヂストン)考えで、レースデビューで弾みをつける。
横浜ゴムは6月下旬に米コロラド州で開かれたヒルクライムレースに、バイオマス由来のブタジエンゴムを用いたタイヤを初供給。同タイヤの装着車は完走を果たした。
同社は日本レースプロモーション(JRP、東京都千代田区)による持続可能なモータースポーツに向けたプロジェクト「SUPER FORMULA NEXT50」に参画している。23年以降、「全日本スーパーフォーミュラ選手権」にサステナブル素材を用いたタイヤを供給予定だ。コメのもみ殻由来のシリカや、アブラヤシ由来のオイルといった配合剤を活用。廃タイヤから再生したゴムなどの再利用にも力を入れる。
モータースポーツ領域では二酸化炭素(CO2)排出がゼロである合成燃料の活用を図るなど、脱炭素に向けた動きが活発化している。タイヤメーカーもこの流れに呼応し、開発のアクセルを踏み込む。