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学生の柔軟な発想で用途開発、長瀬産業が樹脂素材で産学共同研究

用途開発の糸口に
学生の柔軟な発想で用途開発、長瀬産業が樹脂素材で産学共同研究

学生が制作した再生クレヨンを美しく見せるためのホルダー

長瀬産業は19日、多摩美術大学、イトーキ、サムスン電子ジャパン、TOTOと産学共同研究をスタートした。サステナブル(持続可能)をテーマに、長瀬産業が取り扱う樹脂を生かせる製品を、学生が企業の指導を受けながら、授業内で制作する。11月に研究成果を発表する。未来のインダストリアルデザイナーへの同社樹脂の認知度を高めるとともに、柔軟な発想からた作品から用途開発のヒントをもらう。(編集委員・中沖泰雄)

長瀬産業が多摩美大と産学共同研究を始めて今年で5年目となる。初回は同社単独で行っていたが、2年目から取引先の中から設定したテーマに合った企業を募り、複数企業と進めている。

作品の素材となる「トライタン」は耐久性が高く、製品寿命が伸びることから、廃棄が減る。テーマは2年連続でサステナブルになるが、今回はもみ殻やパームヤシの繊維などバイオマス素材を配合したプラスチック「テクサ」も加えた。

17人の学生は企業ごとの3グループに分かれ、イトーキはコロナ禍を経て拡大した働く環境に提案するワークツール、サムスン電子は人に優しいデジタルデバイス、TOTOは暮らしをより充実させるために提案する水まわり製品をそれぞれ制作する。

またオンラインで、樹脂・塗料業界のオープンイノベーションラボ「ナガセアプリケーションワークショップ」を見学し、素材を理解した上で制作に取り組む。

これまでに商品化された製品はないものの、学生が制作したニシキゴイを題材とした製品をヒントとして開発につながったケースがある。ただ、長瀬産業のポリマープロダクツ部営業一課の新井康郎課統括は、「商品化を目指しているわけではない」と説明する。

同社の取扱商品の認知度を高める目的で始めたが、それに加え、今は「突き抜けた発想で製品の可能性を引き出してもらう」(新井課統括)のも狙いだ。同課の水科智美氏も過去に制作された再生クレヨンとそれを美しく見せるホルダーを例に、「このような発想は我々からは出てこなかった」と語る。

今回のテーマには「モノ×コト×トキ開発」ともあり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「すべての人に健康と福祉を」で触れられる「ウエルビーイング」になれる製品が期待されており、ハードルは高い。素材を販売するだけではなく、用途を提案し、新しい価値を創造する必要がある。

日刊工業新聞2022年7月20日

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