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「ジョブ型」を一般社員に適用したシスメックスの狙い

シスメックスは2020年4月から国内の管理職層向けにジョブ型人材管理制度を導入し、21年10月には全ての一般社員向けに適用した。今後は国内関係会社にも拡大する方針。同社はグループ連結で海外売上高比率が約85%で(22年3月期)、海外関係会社の重要性が高い。グローバル基準に合わせて全体で働きやすい環境を整備し、国際競争力を強化する考えだ。

リーダー層の一般社員や管理職層には、ジョブディスクリプション(職務定義書)に基づき、個人ごとに業務内容を明確に定義する。その他の一般社員に対しては、「ミッションディスクリプション」という取り決めに基づき、一定規模の組織を単位として業務内容を定義。その範囲で、社員に業務を割り当てる。

海外では専門人材の中途採用が一般的だが、日本は新卒一括採用がメーン。若手社員に対し明確な業務内容を設定するのは難しい。日本ならではの事情を考慮した制度設計だ。

各社員の行動特性や実績を評価し、それに合う適切な業務を担当。従来の属人的な評価基準からの脱却を図っている。立花健治取締役専務執行役員は「自分のキャリアイメージを持つ若い世代にはマッチしやすい」と、社内の反応を見る。

同社はグループ連結では、社員の約6割が外国籍。海外ではジョブ型制度。その上で、それぞれの国や地域の水準に合わせて給与・報酬体系を柔軟に設定し、優秀な人材を確保する。管理職層は今後、グローバルで制度統一も進める。

業務内容を明確化したとはいえ、業務が完全に固定化されるわけではない。経験を積めば当然、自分のキャリアイメージも変わる。立花取締役は「上司と部下がキャリアを常に議論することが大事」と話す。そうした議論こそが、労働環境改善の本質といえそうだ。

日刊工業新聞2022年5月31日

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