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白い鉄さびが日焼け止めクリームをより安全にする!?

物材機構が開発

物質・材料研究機構の井出裕介主幹研究員は北海道大学、広島大学と共同で、白い鉄さびを使った新たな紫外線(UV)カット剤を開発した。現行の日焼け止めクリームなどには酸化チタンが多く使われているが、安全性の問題が指摘されており、この代替品として期待される。紫外線を吸収する二核鉄イオンを多孔質シリカを用いて安定化させた。実際に日焼け止めクリームを試作し、酸化チタンと同等の効果と安定性を確認した。

UVを吸収し高い光触媒活性を持つ二核鉄イオンに着目。同イオンは不安定で従来は利用が難しかったが、市販の多孔質シリカと単核鉄イオン溶液を混合することで二核鉄イオンをシリカの微細構造内部に埋め込み、安定な白色粉末を得た。

二核鉄イオンは水素イオン指数(pH)の上昇で縮合し、着色した物質ができる。シリカの微細構造に固定することで周りに反応物が近寄れず、こうした反応を抑えられる。

用いる多孔質シリカ構造を変えることで、鉄二核イオンの高い光触媒作用を維持させることも可能で、空気清浄機などへの応用も見込まれる。

酸化チタンは、白色顔料やUV防止剤として化粧品や食品などに幅広く使われているが、2020年に欧州連合(EU)で発がん分類区分2に指定され、利用や製造が制限されつつある。国内では禁止されていないが、より安全な代替材料の開発が求められている。

日刊工業新聞2022年6月28日

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