ニュースイッチ

空の安全、どう守る?始まった「ドローン登録義務化」制度の全容

空の安全、どう守る?始まった「ドローン登録義務化」制度の全容

ドローンの活躍の場が広がる一方、空の安全確保が課題(イメージ)

飛行ロボット(ドローン)などの無人航空機の登録を義務化する国の制度が20日に始まった。ドローン所有者には機体を識別するための登録記号の表示とともに、識別情報を電波で遠隔発信する「リモートID機能」の装着が求められる。自動車のナンバープレートのように飛行中のドローンの情報をリアルタイムで把握し、空の安全を図るのが目的。国内で稼働中のドローンを同制度でどれだけカバーできるのか、ドローン関連企業の関心が高まっている。

新制度では重量100グラム以上のすべての無人航空機が登録の対象となる。非登録の機体を飛ばした場合、1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科される。

2021年12月20日から事前登録を受け付けており、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課によると、事前登録された機体は5月末時点で約15万2000機。国内で稼働するドローンがそもそも何機なのかについて「最大手の企業から回答がもらえなかった」と同課は話す。民生用ドローン市場では中国のDJIが世界シェアの7割を占めるとされる。日本でも同社製機体のユーザーは多い。

同制度ではドローンのメーカー、製造番号、型式、種類といった機体情報のほか、所有者や使用者の情報の登録も必要になる。理論上は「何時何分現在、どこの上空でどのドローンが飛んでいるか」をすべて把握できることになる。機体に装着するリモートID機能はドローンの製造番号や登録記号、位置、速度、高度、時刻などを毎秒ごとに発信する。監視や取り締まりでは「警察庁とも連携している」(国交省)という。

ロシアによるウクライナ侵攻では、戦場におけるドローンの有用性が話題になった。それ以前にも油田やタンカー攻撃で注目されていたが、ドローンは搭載したカメラと連動することで精密誘導兵器になり得る。スイッチが入っている飛行中の機体であれば「強い電波でドローンを乗っ取ったり、プログラムを事前に仕込んで撮影した映像を伝送したりすることは可能だ」と国内ドローン関連企業の首脳らは口をそろえる。

新制度の機体登録は3年ごとの更新制で、不正が見つかった場合は直ちに取り消しができるようになっていることもポイントだ。ドローンは技術の進歩が早く、ユーザーはおおむね2―3年で新しい機体に買い換えるのが一般的だ。

インフラ設備の点検や物流での活用など、ドローンが活躍する場は広がっている。新制度によって今すぐに登録のカバー率を100%にするのは非現実的だが、3年後にこの数値がどこまで高まり、空の安全確保につながるかが注目される。

日刊工業新聞2022年6月20日

編集部のおすすめ