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決算期を変更したドローン企業「ACSL」、安定成長なるか

ACSLは2021年に、決算期を3月期から12月期に変更した。同社の飛行ロボット(ドローン)は官公庁向けの売り上げ比率が高く、1―3月に集中する受注を第1四半期にずらして年間の業績予想を立てやすくするのが狙いだ。実際、同社のここ数年の業績は売上高、当期損益とも浮き沈みを繰り返しており、決算期変更で安定成長を達成できるかが問われる。

21年の総括について鷲谷聡之社長は「売り上げと利益をしっかり出すために必要な準備が整えられた1年だった」と語る。受注高は21年末時点で10億円以上を確保。売上高は9カ月変則決算だった前期の5億円から22年度は5倍の25億円、25年度はさらに4倍の100億円、当期利益では25年度に10億円達成が掲げた目標だ。22年度は売上高では伸びるが当期損益ベースだと3億5000万―6億5000万円損失と“赤字”が続く。赤字幅予想に振れがあるのは「半導体高騰影響のため」だという。

国産ドローンメーカーの同社は、研究開発費負担が先行する。「売り上げの状況に関係なくコアである研究開発活動を継続し、市場拡大に備えたい」と鷲谷社長は力を込める。22年度も研究開発費は6億円以上充てる計画。研究費を削れば目先の利益を出すのは容易だがあえてそれをせず、自動飛行規制緩和によるドローン市場拡大の23年以降に備えて雌伏の時期が続く。

利益の根拠になるのが同一機体の大量受注だ。小型ドローン「蒼天」は商品化済みで年1100機以上の出荷を目指す。煙突点検や物流ドローンも順次開発、拡販する考えだ。

小型機体は数は多いが低価格なため、粗利では多くは望めない。収益向上には物流ドローンのような単価が高く粗利も大きい機体の成功が不可欠になる。物流では日本郵便と資本業務提携済みで、共同で市場開拓を図る。

海外拡大や人材獲得も不可欠になる。研究開発費など必要なコストを支払いつつ、それ以上の収益を上げられるか。今後の数字実績が鍵を握る。

日刊工業新聞2022年4月7日

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