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「用紙」値上げが止まらない…ロシア・ウクライナ情勢が追い打ち

需要先細りも他社追随へ

印刷・情報用紙の値上げが2022年に入って2巡目を迎える。日本製紙は9日、8月1日出荷分から現状比15%以上引き上げると発表した。7カ月ぶりの改定で、今回はロシア・ウクライナ情勢や円安進行が原燃料など生産コストの上昇に追い打ちをかけているのが要因だ。需要が先細りする中で競合も追随するとみられるが、メーカー間での体力差も鮮明になっている。

日本製紙は1月1日分から3年ぶりの値上げを表明。大半の顧客に受け入れられたのもつかの間、今回再値上げを「世界情勢の激変に伴いコストは急騰の一途。急激な円安が拍車をかける状況」と説明している。過去数年にさかのぼっても同一企業で1年間に複数回、値上げしたことはないという。

印刷・情報用紙で販売シェア首位の日本製紙が表明したことで、競合も近く再値上げを打ち出しそうだ。あるメーカーは「コスト状況や価格政策は各社で違うが、再生産が可能な収益の確保を目指す点は同じ」と強調する。大王製紙、中越パルプ工業などは再値上げする際のリスクに「需要の減少」を挙げる。

同用紙は人口減やIT化に伴うペーパーレスから減少傾向にある。コロナ禍が始まった20年春以降の需要急減からは持ち直したものの、19年実績に対して約8割。日本製紙連合会がまとめた4月の国内出荷数量(速報)は4カ月ぶり減。1―3月は値上げ前の駆け込み需要もあった。

こうした中、王子製紙は7月1日分からの値上げを公表したばかり。かねて進める余剰能力の抑制、生産性向上の成果もあり価格転嫁に慎重だった。約半年のズレに、他社との違いをみせつけた格好だ。

日刊工業新聞2022年6月10日

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