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宇宙開発を支える、人工衛星向け光通信網サービスが始まる

情報の“渋滞”解消目指す

宇宙開発が進む中で高度500キロ―800キロメートル付近の低軌道に存在する人工衛星が年々増加している。人工衛星が得たデータは地上局を介して研究者に送られるが、地上局の数が少なく情報が”渋滞”している。ワープスペース(茨城県つくば市、常間地悟最高経営責任者〈CEO〉)は、人工衛星向けの光通信ネットワークサービスを始める。宇宙開発が進むにつれて取り扱う情報量が膨大になる前に、宇宙での通信環境の整備が必要だ。(飯田真美子)

同サービスは2024年冬―25年春に開始する。サービス開始時は無料だが25年中に有償化する予定で、通信料金はタイムチャージ制で10分当たり200ドル程度を見込んでいる。30年までに年間収益1000億円を目指す。同社の常間地CEOは「宇宙空間の光通信ネットワークを整備し、宇宙開発を通信分野から支えたい」と意気込む。

低軌道にある人工衛星のデータ通信を円滑にすることが目的で、宇宙空間で高速光通信を提供して通信料をもらうビジネスだ。365日24時間観測データの収集ができるようになる。あえて地球から遠い場所に中継器となる人工衛星を打ち上げ、そこにいったんデータを送ってから地球に届けることで通信範囲を広げる仕組み。政府系研究機関以外に米国に3社ほど競合他社がいるものの、技術面やコストがかかる点から参入は遅れている。民間による宇宙空間での商用の光通信ネットワークサービスを提供するのは同社が世界初だ。

サービス開始と同時期に通信体制を構成するカギとなる人工衛星初号機「LEIHO(霊峰)」を高度約2000キロメートルに打ち上げる。大きさは縦、横、高さが各約1メートルの立方体、燃料タンクを除いて200キログラム以上となる。「性能だけでなく見た目のデザイン性にもこだわる」(常間地CEO)とほほ笑む。

ビジネスの本格化に伴い社員数も増え、同社は近く本社を移転する。よりつくば駅に近い立地で、現在の敷地の2・5倍ほどの広さになるという。22年春には米国に子会社を設立し、欧州拠点を構えることも考案中だ。

最近では宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、月と地球をつなぐ光通信ネットワークの構築も進めている。将来的には宇宙旅行や宇宙ホテル、民間の国際宇宙ステーション(ISS)、月・火星探査などにも対応させる。宇宙開発のデータが膨大になりつつある中で、宇宙の通信環境を整備することが地球への貢献につながる。
日刊工業新聞2022年6月8日

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