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参入増える「宇宙ゴミでビジネス」、JAXAの貢献

使用済みの人工衛星やロケット、それらの破片など、軌道上にある不要な人工物体は、スペースデブリ(宇宙のゴミ。以下「デブリ」)と呼ばれる。地球を周回している人工物体の数は、その起源と軌道が分かっているもの(低軌道でおよそ10センチメートル以上のもの)だけでも現時点で3万個近くあり、その多くがデブリである。ミリメートルサイズの物体まで含めると、その数は1億個を超えるとされている。大型物体同士の衝突や爆発による大量の破片の発生もすでに何度か確認されており、このまま放置すると、衝突の連鎖により、さらに軌道上環境が悪化する懸念がある。

このデブリ問題を後ろ向きに捉えるのではなく、ビジネスの機会と考える事業者が増えてきた。その中の1社がALE(東京都港区)である。今後、デブリを減らすためには、すでに軌道上にあるデブリを取り除くこと(Active Debris Removal, ADR)に加えて、今後打ち上げられる宇宙機がその役目を終えた後に再突入に向けて自ら軌道高度を下げてゴミにならないようにすること(Post Mission Disposal, PMD)が重要と考えられており、ALEは、このPMDを容易にするための小型簡素な装置の販売を目指している。

PMDに必要な軌道降下用の推進装置の候補の一つが、JAXAで長年研究されてきたエレクトロダイナミックテザー(EDT。図参照)である。EDTは、地球周回軌道上で長さ数百メートルから数キロメートルのワイヤやテープを伸ばして電流を流すことで、地球磁場との干渉により生じる電磁気力(J×B力)を軌道降下に利用する推進装置である。軌道上にわずかに残る大気の抵抗力も軌道降下に寄与する。EDTは、地球磁場や大気抵抗という地球環境を生かしたユニークな推進システムであり、推進薬(燃料)が不要であるためPMD装置の小型簡素化が可能だ。

EDTを利用したPMD装置に関して、JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J―SPARC)という枠組みのもとで、ALEとの共創活動が進められている。同社が開発を進めるPMD装置には、軌道上でのテザーの運動を予測する数値シミュレーションや、確実なテザー伸展を評価するための試験、カーボンナノチューブを利用した電子放出デバイスなど、さまざまな技術でJAXAの研究成果が生かされている。デブリ問題の解決と新たな宇宙ビジネスの発展に期待したい。

研究開発部門 第二研究ユニット 大川恭志

電気推進やテザー推進などの宇宙推進に関する技術を主な研究対象とする。この共創活動では、立場も背景も異なる方々との議論により新しいひらめきが生まれる楽しさを実感している。

日刊工業新聞2022年5月30日

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