サッカー×AIで「地元愛」を醸成できるか、湘南ベルマーレがKPMGと挑む
KPMGコンサルティング(東京都千代田区、宮原正弘社長)は、プロサッカークラブの湘南ベルマーレと共同で、“スポーツ×国連の持続可能な開発目標(SDGs)”をテーマとする「地域協創型デジタル基盤」の構築を始めた。神奈川県湘南地域9市11町の企業や自治体、大学とも連携。コロナ禍からの人流の回復を見据え、ファンの来場を促すなどしてエンゲージメント(愛着心や思い入れ)の向上に取り組んでいく。
KPMGと湘南ベルマーレは2020年に「オフィシャルクラブパートナー」契約を締結しており、デジタル変革(DX)の推進でタッグを組んでいる。3年目となる今シーズンはスポンサー収益への依存を乗り越え、安定した顧客基盤の強化と、地域経済とファンとの結び付けを強めるなどの施策でクラブの社会価値向上に挑む。
現在、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の入場者数はコロナ前と比較すると、多くのクラブで半分程度しか戻っておらず、コアなファン以外の客足は遠のいている。湘南ベルマーレもコロナ前の19年と比べると、53%の水準という。新施策ではファンを起点に、自力で稼ぐ力の強化を目指す。
地域協創型デジタル基盤はデータ分析に留まらず、ファンの来場を促す予測主導型のワン・ツー・ワン・マーケティングプラットフォーム(基盤)を構築する。9月をめどに本稼働する見通し。
この基盤により、クラブ内外に点在するファンデータの統合と一元管理をして“ファンを追う”。次に人工知能(AI)による来場予測と、マーケティングシナリオの自動生成で“ファンを知る”。さらに、マーケティング施策の実行まで含めた発信力で“ファンを動かす”。
例えばAIを用いて来場を予測し、試合ごとのマーケティングに生かす。属性など従来型のデータ活用に「感情データ」を加え、ファン一人ひとりにきめ細かく対応する。捕捉したファンや来場者には効果的なコンテンツを提供し、単価向上や囲い込みを図る。入場料やグッズ収入などを増やし、チーム強化費用も拡大する。
地域に対しては観戦機会やファン数の増加で来訪者や居住者を増やすとともに、街への愛着心を醸成する。併せてスポンサーの協賛価値の向上も図る。将来的にはインターネット上のメタバース(仮想空間)での展開も視野に入れる。
併せて湘南ベルマーレを中核に地域住民や企業、自治体などがSDGs活動に参画できる“場”も作る。第1弾として、地域の子どもを対象としたプログラミング教室などを計画中。
将来は、一連の取り組みを他のスポーツチームやそれを支える企業や行政などへも展開する計画。スマートシティー(次世代環境都市)のモデルの一つとなるかという観点でも注目が集まる。