冷凍用容器を年間20万枚生産するロボットの実力
大森工業(千葉市花見川区、根上靖晃社長)は、製函事業で手がける冷凍パン(平ら状の容器)の製造工程にロボットを導入した。板金プレス加工で素材を移し替える工程に、自動で部品を移し替えるロボットを設置。これまで必要だった人員を3人から1人へと省人化した。ロボットの周囲には柵を設置し、現場で働く従業員の安全性確保を図っている。
大森工業の製函事業では、食用氷の製氷に必要なアイス缶、水産物の魚類の冷凍などに使用する冷凍パンを製造している。
ロボットで生産している冷凍パンは年間約20万枚の規模。冷凍パンを手がける企業は国内で2社のみとなっており、安定供給が求められる。
冷凍パンの工程は、プレス機から別のプレス機へと素材を移し替える工程があった。これまで無事故で操業していたが、従業員による手作業の工程には、ケガのリスクがあった。
従業員から不安を訴える声はなかったものの、同社の阿部光雄専務は「万が一ということもある。少しでも安心感が高い状態で従業員が働けるように」と考えていたという。また、ロボットによる効率化を進めることで、若手社員の定着率を上げることも狙っていた。
ロボットの導入を検討していた時期は、製函に使用する板金プレス加工機のオーバーホールが必要な時期でもあった。そのオーバーホールの投資に合わせて、2020年に総額約6000万円を投じて、ロボットを導入した。
ロボット導入を機に、従業員の労働環境向上と、安全性強化を目的にロボット設置場所の床の改装を実施した。また従業員の安全性を確保するため、素材を置く機械の入り口と、完成した製品が出てくる場所以外は柵で囲んだ。ロボットの動作調節などの作業を除いて、稼働中に従業員が柵の中に立ち入ることはない。
ロボットを設置した生産ラインには、自動的に工程が流れるようプログラムを組み込んだ。冷凍パンの工程には従来3人の従業員が必要だったが、プログラム操作と製品の品質の最終確認をする従業員1人で生産が可能になった。省人化により、同社の他事業により多く従業員を配置することもできるようになった。
ロボットの導入について阿部専務は「主な目的は従業員の安全性確保にあった。加えて、自動化により供給の安定性が高まったことは、取引先からの信頼向上にもつながる」と手応えを語る。ロボットによる自動化で昼休みなどの従業員がいない時間も生産できるため、生産性は1日当たり10%程度向上した。
阿部専務は「大規模な投資には不安もある。しかし社員の働く環境を整えるのは大事。将来の成長にもつながり、投資も回収できると思っている」としている。社員の安全性を高める投資を実施して事業の継続性を高め、水産現場に必要な冷凍パンなどを供給し続ける。